回復期待の個人消費に物価上昇のピンチ~消費動向調査より~<2022・06・10>

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最終更新日: 2022年6月10日

個人消費回復を期待した2022年経済見通し

 年初での主要シンクタンクの2022年度経済の実質成長率見通しの平均(注1)は3.1%であった。

 この時点では、今まで経済を押し下げてきた新型コロナウイルスに対してワクチンが行きわたり、医療体制も整備されるなどのことから、経済活動も正常化されるとの見通しが背景にあった。

 実際に年当初こそオミクロン株の感染は大きく広がったが、その後はコロナの経済への悪影響は小さくなってきている。

 ところが2月24日に想定外のロシアのウクライナ侵攻という事態が生じ、それが引き金となって原油・資源高、素材不足、円安、世界情勢不安など経済にはブレーキがかかってしまった。

 これを受け6月での主要シンクタンクの平均見通し(注2)は2.2%に下方修正をされている。

コロナ感染での消費抑制は低下

 こうした状況下、気になるのが年当初期待をされていたGDPの6割を占める個人消費だ。

 長野経済研究所が四半期毎に実施している22年4月の「消費動向調査」より、長野県内の消費動向を報告したい。

 まず、「新型コロナへの不安感」だが、「とても不安に感じている」という回答割合は32.5%と、コロナ感染が始まった時期の20年4月調査の74.3%と比較すると半分の割合以下に減っている。

 それを受け「コロナ感染前と比べた消費行動」でも、「抑制的」とする答えは20年10月調査では58.2%だったものが、今回の調査では47.2%にまで下がっている。

 コロナ感染に対する不安感を原因とする「消費抑制」の負のマインドは低下しているようだ。

新型コロナより懸念される物価高

 ところが冒頭に記載したように足元では、原油・資源高を契機に多くの物の価格が値上がってきている。

 長野市の4月の消費者物価指数(確報値、2020年=100)は、生鮮食品を除く総合では前年同月比2.7%増の102.1となっており、9カ月連続で前年水準を上回っている。

 実際にこの物価の上昇を県内の世帯ではどのように感じているかを尋ねると、「上昇している」という回答割合が56.7%、「やや上昇している」が33.8%と約9割が物価上昇を感じている。

 このような状況を背景に、「生活を下押しする要因として懸念しているもの」を尋ねると、「ガソリン価格高騰」の回答割合が68.4%と最も多く、「食料品や日用品などの物価上昇」62.5%、「ウクライナ情勢」60.4%と続く。

 「新型コロナ」に対する回答割合は59%と4位の位置づけとなっており、現状、新型コロナへの懸念は残しつつも、物価高やその元となっているウクライナ情勢などが、生活を下押しする要因として心配されている。

原油・資源価格高騰が立ちはだかる今後の経済情勢

 今後を見通すなら、ウクライナ情勢は不透明な中にあり、物価が引き続き高止まりする可能性は高い。

 そうなると、企業業績も下押しされることから、設備投資が先送りされる懸念が出てくる。

 当研究所の「設備投資動向調査」によると、22年度の当初計画では対前年36.1%と積極的な計画となっている。先送りされた場合の長野県経済へのマイナス影響は大きい。

 また、米国はこの物価高に対し強い警戒感を抱いており、5月には0.5%の大幅な利上げを実施した。

 今後も物価の行方によっては想定以上の金融引き締めもあり、そうなると世界経済に大打撃を与える事になる。

 このように今年の経済は、ウクライナ情勢に起因した原油・資源価格高騰といった「物価高」を中心に厄介な事象と付き合っていかざるを得ないだろう。

 


(注1)2021年10-12月GDP速報値を受け次の10機関の公表した2022年度の経済成長率の平均を算出したもの(大和総研、日本総合研究所、日本経済研究センター、三菱総合研究所、東レ経営研究所、ニッセイ基礎研究所、三菱UFJリサーチ&コンサルティング、SMBC日興証券、農林中金総合研究所)
(注2)(注1)と同機関の2022年1-3月期GDP速報値を受けての数値

 

 

 

 

 

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