引き続き注視が必要な米中貿易摩擦の影響<2019・11・11>
非製造業の景況感が悪化
2019年10月に当研究所が行った業況アンケート調査によれば、企業の景況感を示した2019年7~9月期の業況判断DI(業況が「良い」と回答した企業割合-「悪い」と回答した企業割合、%ポイント)は、全産業が△20.8と3期連続で悪化しました。
業種別では、製造業が△24.7と前期とほぼ変わらず横ばいとなりました。米国の中国に対する追加関税が一部先送りされたことから一段の業況下押し懸念が薄らいだことや、自動車向けの受注が底堅かったことにより、業況判断DIのさらなる悪化とはなりませんでした。
一方、非製造業は、△17.3と前期に比べ15.7ポイントの大幅な悪化となりました。設備投資の一巡や景気減速による投資の先送りなどに伴い、民間の建築需要などが落ち込みました。
19年10~12月期は、全産業が△31.9と7~9月期に比べ11.1ポイントの悪化見通しとなっています。このうち製造業は△31.4と同6.7ポイント、非製造業は△32.4と同15.1ポイント、それぞれ悪化する見通しです。製造業の国内需要は、自動車関連を中心とした国内需要に底堅さがみられる一方で、米中貿易摩擦の長期化による影響が引き続き懸念されます。また、消費税増税の経済への影響は、政府の対策により限定的とみられますが、非製造業では、消費の落ち込み懸念から卸・小売業を中心に慎重な見方が広がっています。
2019年度の売上高は、製造業の4割が減収見通し
米中貿易摩擦の県内企業への影響をより詳しく知るために、「米中貿易摩擦の影響に関するアンケート調査」も同時に行っています。
まず、米中貿易摩擦の県内企業への影響について尋ねると、「既に影響が出ている」という回答が全産業の34.1%、「影響は出ていないが、今後3カ月以内には出る見込み」が6.1%、「影響は出ていないが、今後6カ月以内には出る見込み」が10.1%となりました。産業別では、製造業は「既に影響が出ている」という回答は49.0%と、前回調査(2019年7月)の48.2%とほぼ同じになりました。
さらに、米中貿易摩擦に伴う2019年度の売上高への影響についても尋ねました。「変化なし」の企業割合は64.5%、「減少見通し」は33.6%となりました。産業別にみると、「変化なし」は製造業が55.8%、非製造業が72.9%、「減少見通し」は製造業が42.6%、非製造業は24.8%となっています。特に製造業では減収見通しの企業が前回調査と同様に4割を超える状況です。
注目される米中協議の今後の行方
今後の県内景気への影響を見る上で注目される動きは、米国が12月15日に発動を予定している中国からの輸入品に対する追加関税です。中国からの輸入依存度が高い555品目(1,600億ドル相当)に15%の追加関税が課されます。これらの品目の中には県内製造業にも影響が予想される、携帯電話やノートパソコン、玩具などが含まれています。
米国内の個人消費への影響を避けるため、トランプ政権は予定よりも発動時期を後ろにずらす対応をしましたが、景気への影響を懸念する声が多くなっています。
米中貿易問題の出口が見えない中、今後の両国の交渉の行方とともに県内企業への影響にも引き続き注視していく必要があります。
関連リンク
産業調査
電話番号:026-224-0501
FAX番号:026-224-6233