長野県の景気の谷は「2020年6月」< 2022・4・20 >

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最終更新日: 2022年4月20日

最新の景気の谷は2020 年6月(暫定)

   当研究所では、県内の景気が拡張期にあるのか、後退期にあるのかを把握するため、長野県景気動向指数(NCI、NDI)を作成しています。これは内閣府が作成している全国の景気動向指数の長野県版です。景気拡張期の頂点を「山」と呼び、山を越えると景気は後退に転じます。後退期の底を「谷」と呼び、底を打つと景気は拡張期となります。つまり、この山谷の時期を確定することで、景気の拡張期、後退期が判定できることになります。
 内閣府によると、全国の景気は2018年11月から後退期となりました。その後、まだ暫定的なものですが20年5月が谷と判定され、拡張期に入ったことが公表されています。この公表に伴い、当研究所でも長野県景気動向指数を基に、長野県の景気の谷を20年6月(暫定)と判定しました。
 長野県の景気は18年9月から後退期に入った後、20年6月を谷として拡張期に入ったことになります。 

景気後退のきっかけは米中貿易摩擦、そして新型コロナ

 18年9月から始まった長野県の景気後退は、米中貿易摩擦に伴う製造業への影響が引き金となりました。製造業への影響を示す長野県鉱工業生産指数の動きをみると、生産の大きな割合を占める生産財生産指数が18年秋ごろから減少に転じ、全体の生産指数も年末をピークに減少しました。
 さらに20年に入ってからの新型コロナの感染拡大により国内で緊急事態宣言が発出されると、国内外の観光客が途絶え、県内への宿泊者数は急激に落ち込み、観光関連事業者を中心に業績は悪化しました。製造業では労働者への感染防止から操業を停止する工場が相次ぎ、サプライチェーンにも問題が広がったことで生産停止を余儀なくされました。

拡張期に入るが業種別の格差がみられる

 その後、20年6月に国内の緊急事態宣言が解除され、海外のサプライチェーン問題が改善すると、5GやPC等のIT関連や、自動車などの需要拡大を受けて製造業の景況感は急速に回復しました。一方で、非製造業は谷となった20年6月以降も相次ぐ緊急事態宣言の発出により観光関連産業を中心に業績は低迷し、製造業との回復格差が拡大する、いわゆるK字型の回復となっています。

足もとでは、製造業と非製造業の景況感の格差は縮小

 さらに足もとでは、ロシアのウクライナ侵攻に伴い先行きに対する不透明感が高まっています。世界的にインフレへのリスクも広がっており、これまで高水準にあった製造業の景況感は悪化に転じています。また、為替の円安も原材料価格の上昇に拍車をかけており、今後、販売価格への転嫁が進まなければ、マイナスの影響が広がることが懸念されます。
 ただ、非製造業は、善光寺御開帳など県内の大型イベントの開催効果への期待もあり、景況感は上昇への期待が膨らんでいます。コロナによる感染再拡大も懸念される中、感染対策を徹底しこれまで落ち込んでいた観光関連産業が少しでも回復し、経済全体の下支え役となることが期待されます。

 

(初出:2022年4月19日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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