長野県経済に変調の動き~5期振りの悪化となった業況判断~<2021・10・25>
暗い影を落とした緊急事態宣言
9月末に緊急事態宣言もようやく解除され、10月に入ってからは首都圏での飲食店への時短営業要請も解除され始めた。
振り返ると今年に入ってから日本経済は、2から4回目にあたる3度の緊急事態宣言の只中にあった。
昨年実施の全国を対象とした宣言を数えると、1月8日から3月21日までが2回目、4月25日から6月20日までが3回目、7月12日から9月末までが4回目となる。
今年に入ってからは主に首都圏を中心とした地域を対象としたものだったが、それらの地域を主な市場とする長野県観光業は大きなマイナス影響を受けてきた。
V字型の回復を遂げる製造業とは対照的に、非製造業全般は低迷を余儀なくされてきた。
5期ぶりの悪化となった7-9月期県内の業況
四半期ごとに当研究所で実施している「業況アンケート調査」の7-9月期の結果をみると、全産業の業況判断DIは対前期2.4ポイント悪化のマイナス9.8と5期振りの悪化となった(図表1)。
要因は製造業、非製造業双方にある。図表2を見ると明らかなように、このところV字型に回復を遂げてきた製造業の回復にブレーキがかかったことと(赤点線の折れ線グラフが折れ曲がっている)、非製造業が2期ぶりに悪化したことだ(青い実線が下がっている)。
それぞれの業況判断DIをみると、製造業は17.5と前期に比べわずか2.4ポイントの回復にとどまった。
一方の非製造業は8ポイント悪化しマイナス34.4となった。
悪化要因は半導体不足と緊急事態宣言
主な理由は、半導体不足と緊急事態宣言だ。
半導体不足が大きく影響したのが自動車部品製造業だ。同業では、半導体の不足に加え、東南アジアでのロックダウンによる部品調達の遅延で完成車の生産が滞り、受注が低調となった。
その結果、業況判断DIは前期に比べ30.9ポイントも悪化してしまいマイナス16.6となり、これが製造業の回復にブレーキを掛けた。
図表2の製造業の折れ線は図表1と同じものだが、その中の輸送用機械を括りだしてみると(赤線)、急激な悪化が製造業全体を下押ししていることがわかる。
緊急事態宣言は冒頭述べたように、観光業の苦境を長引かせ非製造業全体を悪化させた。
小雨が目立つ長野県産業天気図
この動きを各産業別に確認すると、図表3の産業天気図のようになる。
「自動車部品製造」の天気は、前期の曇りから小雨に悪化した。
自動車部品の受注が低調となることで「貨物」でもその荷動きが低調となり、同業でも曇りが小雨に悪化している。
「観光」では、今年に入って継続されてきた緊急事態宣言と軌を一にして1-3月期から雨が続いている。
こうした悪影響の蓄積に伴い、宿泊施設や飲食店にアルコールなどを提供している「飲料製造」でも、天気は遂に雨にまで悪化している。
経済の正常化に向けた意図的な活動を
今後に向けては、製造業の業況感は半導体の供給状況に左右される部分が大きいが、先行きは不透明だ。
一方、観光など非製造業では、緊急事態宣言解除を契機に回復が期待されるところだ。
しかし、新型コロナ感染者の減少とは一線を画するように、経済の正常化に向けた動きはたどたどしい。
そうした中、製造業の悪化が続くようなら、回復を続けてきた長野県経済全体が腰折れとなる可能性も小さくない。
経済の正常化に向けた、意図的な行動が必要な時期となっているのではないか。
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