人生も事業も人への優しさが最も大切で、強いものだ<2020・09・21>

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最終更新日: 2020年9月21日

 

  今回は「優しさシリーズ」第二弾と言うべきか、企業の優しさについて考えたい。

  9月12日、13日と「人を大切にする経営学会」が行われた。今回はWebでの参加も可能だったため、家に居ながらにして大いに学ぶことができた。

  ここでの講演を聞いて、やはり「優しさ」と言うのは社会にとっても、企業にとっても非常に重要だということに、当たり前だが改めて気づいた次第である。

人を大切にする経営学会 基調講演「今まで守り続けている3つの教え」

 基調講演は、兵庫県西宮市で洋菓子を手掛ける有限会社ツマガリの津曲孝社長からであった。

  この会社は、経営の目的が「人の幸せ」であり、社訓を「人間味」としている。

  有言実行の経営であり、実際に育成した社員の独立支援を積極的に行ったり、障がい者雇用にも粘り強く、熱心に取り組んでいる。

  こうした経営が評価され、2016年度の「第7回 日本でいちばん大切にしたい会社大賞」を受賞している。

  また、クッキーなどの通信販売を古くから手掛けてきたことから、今回のコロナ禍では既にネット販売での実績を多く持っていたため、さらに業績を伸ばすこともできた。

  津曲社長の講演のテーマは「今まで守り続けている3つの教え」というもの。

  津曲社長は、幼くして両親が離散してしまったことから祖母に育てられてきた。その親に代わる祖母から3つの教えを得た。

  それが「一生懸命に仕事をすること。人に好かれること。女性を大切にすること」の3つで、これを愚直に守ってきた。

  これらを守るためには、「人にやさしくすること」だったというのが、この講演のエッセンスだとお聞きした。

  商売人は、人に好かれなくては何も売れない。そのためには、お客さんに優しく、社員に優しくというのが基本となろう。

  「人生も事業も人への優しさ、思いやりが最も大切で、強いものだ」という津曲社長のメッセージには大いに励まされ、共感するところばかりであった。

基調報告 「社員幸福度指標の研究」 千葉商科大学 藤井正隆教授  

  基調報告は、千葉商科大学の藤井正隆教授からの「社員幸福度指標の研究」というものだった。

  社員が幸福感を感じる程、会社での生産性が上がることは、欧米の研究などから分かっている(業績の悪い企業の原因は、「社員の不幸」かもしれない<2018・10・4>参照)。

  また、これは直観的にも感じるところで、自分は不幸だと感じていては良い仕事などできるはずがない。

  こうした事から、社員はどのような要因で社員幸福度が上がるのかを調査したものが本研究だ。

  「心理」、「健康」、「経済」、「家族」、「職場環境」、「組織風土」などさまざまな要因毎に、社員幸福度に影響するものを分析してみると、「職場環境」が最も高く、次いで「組織風土」となった。

  例えば、「職場環境」というのは、職場での人間関係に拠る所が大きい。

  つまり、社員幸福度を上げるには、職場の人間関係で悪い意味でのストレスを感じないということが必要だ。それは、風通しが良く、言いたい事が言える。社員同士の仲が良い。当然パワハラ等とは無縁で、夫々の特性を活かした仕事ができるなどとなろう。

  「組織風土」は、それぞれの企業が積み重ねてきた独特の慣習や雰囲気である。

  良い組織風土としては、従業員同士の信頼感が高く家族的、優しい社員が多く、チームワークが良いなどがある。

  上記の「職場環境」や「組織風土」を持つ企業では、社員幸福度は高くなると考えられる。

「優しさ」を基軸に 

  冒頭の話に戻って考えるなら、企業の「職場環境」や「組織風土」の中で、「優しさ」が底流に流れていることで社員幸福度は高まるように思う。

  そうなると結果として、企業業績は向上していく。

  津曲社長の言われる「人生も事業も人への優しさ、思いやりが最も大切で、強いものだ」が意味するところでもある。

  今コロナで仕事が少ない会社も多い。この機会に自社の「職場環境」や「職場風土」について、「優しさ」を基軸に今一度振り返ってみたらどうだろうか。

 
(初出)SBCラジオモーニングワイドラジオJ「Jのコラム」(2020年9月21日放送)

 

 

 

 

 

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