積極性みられる県内企業の2017年度設備投資計画

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最終更新日: 2017年6月13日

2017年度の設備投資計画額は、12.0%の増額計画

   当研究所は、県内企業約700社を対象に「設備投資動向調査」を年2回実施しています。4月には年度当初計画の調査を行い、10月には年度の実績見込額と当初計画に対する修正状況を調査しています。今回は、17年度当初計画の状況をご案内します。
 17年度当初計画額は、全産業で前年度実績見込額に比べ12.0%の増額計画となりました。業種別では、製造業が同+18.1%の増額計画となり、非製造業も同+0.3%とわずかながら増額となりました。当初計画時点で製造業・非製造業ともにプラス計画となるのは、12年度以来5年ぶりです。
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た、企業の投資に対する姿勢を尋ねた「投資方針」(かなり積極的・ある程度前向き・やや抑制的・かなり抑制的から選択)でも、「積極的(かなり積極的+ある程度前向き)」の回答割合が全産業で71.8%となりました。これは、これまでの調査の中で最も高い水準であり、投資姿勢に積極性がみられます

製造業では「維持・更新」に加え「生産能力増強」投資も押し上げ

   17年度当初計画が増額計画となった大きな理由としては、製造業の積極的な投資姿勢が挙げられます。製造業の設備投資は、これまで当初計画段階では前年度を下回る慎重な計画が続いてきました。しかし、そうした中でも底堅い投資を行ってきたのが自動車関連でした。そこへ16年後半から半導体関連を中心とした活発な投資の動きが出てきたのです。
 最近では、中低価格帯のスマートフォンが半導体搭載量を増やしているほか、自動車の電子化や制御システムの高度化が進む中、車載用の半導体も需要が増加しています。また、中国が強力に推し進めている政策「中国製造2025」は、半導体産業の強化を目指し、関連分野の設備投資増加にもつながっています。
 さらに、製造業の投資額の約8割を占める電気機械は、既存設備の「維持・更新」投資に加え、工場や生産ラインの増強を目的とした「生産能力増強」投資により、前年に比べ44.1%の増額計画となっています。こうした製造業の動きが全体の投資額を押し上げています。
 非製造業は前年度に比べ横ばい計画となっていますが、小売業では新規出店計画、ホテル・旅館業では増加する観光需要を取り込む投資が続いています。このほか、これまで抑制していた老朽設備などの維持・更新投資に加え、人手不足に対応した事業の省力化や合理化に向けた前向きな投資も見え始めています

リスク要因は海外の動き

   このように、今年度の設備投資は積極的な計画となっていますが、これを抑制する懸念要因もあります。足もとで米国の利上げが予想されていますが、世界経済をけん引してきた米国景気を冷え込ませる恐れもあります。最近では好調だった自動車販売に頭打ち感も見え始めており、設備投資の需要を考える上でも米国景気の持続力はポイントと言えます。このほか、中国の自動車販売を支えてきた小型車向け減税政策が今年で打ち切られる予定であり、来年には反動減が予想されています。また、朝鮮半島を巡る地政学リスクも懸念要因です。円高が急速に進む懸念もあり、不透明感が増す海外の動向には注意が必要です。ただ、これらのリスク要因が顕在化しなければ、設備投資が景気のけん引役となる見通しです。設備投資の増加が国内企業の収益改善、従業員の所得向上、消費拡大という形で経済の好循環につながるかがポイントになりそうです。  

(初出:2017年6月8日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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