先行きの不透明感が高まる長野県経済

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最終更新日: 2016年8月8日

県内主要産業の天気図は横ばい

    当研究所は、四半期ごとに長野県内の業界の景況感を調査するため、県内企業約160社を対象に「産業別四半期見通し調査」を実施しています。今回は7月調査の結果についてご紹介します。
本調査は、アンケート調査とヒアリング調査をもとに、県内産業の「現況」や「見通し」を天気マークで表しています。「晴れ」は「好調」、「薄日」は「順調」、「曇り」は「普通」、「小雨」は「低調」、「雨」は「不調」を表します(図表)。
  産業別にみると、製造業は4-6月期の現況、7-9月期の見通しとも、「曇り」の業種が多くなっています。前期に続き米国などの自動車向け需要は底堅いものの、急速に進んだ円高を警戒し先行きに慎重な企業が増えています。また、スマホ向け需要の低迷に伴い「電子部品」は「小雨」の状況が続きそうです。
  非製造業でも、現況は「曇り」が多い中、「ホテル・旅館」は真田丸や御柱祭に伴う誘客効果にも支えられ、「薄日」となっています。7-9月期も夏季行楽シーズンを迎え、「山の日」制定や各地で開催されるイベントなどに伴って利用者の増加が期待される「ホテル・旅館」や「旅客」は「薄日」の見通しです。なお、同時に行っている四半期別業況アンケート調査の「業況判断DI」(自社の業況が「良い」と回答した企業割合と「悪い」と回答した企業割合の差)をみると、全産業で4-6月期の△14.0ポイントから、7-9月期は△18.3%と、先行きの不透明感の高まりから低下傾向となっています。 

英国のEU離脱の影響は今のところ軽微

   今回の調査期間中に、英国ではEU離脱の是非を問う国民投票が行われました。EU離脱派の勝利が決まった6月24日は円相場が急上昇し、一時1ドル=100円を突破しました。こうした為替の急激な変化は今後の見通しにも少なからず影響を及ぼしたと考えられます。
   実際に原材料の輸入などで円高の影響がプラスに表れる「食料品製造」などの見通しはプラス水準を維持する一方、輸出依存度の高い電気機械や自動車部品などの機械系業種では円高のマイナスの影響を受け、見通しの景況感は悪化しました。製造業全体の業況判断DIは4-6月期の△9.6から7-9月の見通しでは△18.3と9.6ポイントの低下を予想しています。
   製造業の2016年度の想定為替レートについては、平均値は1ドル=108円70銭と前回の4月調査(115円30銭)に比べ大幅に修正されました。現在の水準でも想定レートを上回る状況にあり、今後の企業業績にも影響を及ぼし、景況感をさらに下押しする懸念もあります。
   英国のEU離脱は、県内企業にすぐに影響を及ぼす可能性は低いとみられます。ただ、中長期的にみれば、世界経済の先行きをみる上でEUの拠点としての見直しの動きなどがリスク要因の1つとなり、円高に振れやすい環境が続くと考えられることから先行きを慎重にみる企業が多くなっています。
   今後の為替の動向次第では、「業界全体の設備投資にも影響を及ぼす」と回答した企業のほか円高により輸入物価の低下で「消費者のデフレを再び意識させる」といった声も聞かれました。為替の変動次第では、デフレ克服を目指す政府に対し次なる対策を求める声も高まりそうです。
 

(初出:2016年8月4日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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