空調技術で世界を快適に~(株)デンソーエアクール<2025・12・21>
「ものづくり大賞NAGANO2025」大賞受賞
(株)デンソーエアクール(安曇野市)は、冷暖房技術の専門企業である。創業60周年となる2026年を前に「ものづくり大賞NAGANO大賞2025」を受賞した。
受賞対象となったのは、同社が開発した移動可能なスポットクーラー「ムービンクール」である。宮沢幸央社長は「冷凍空調一筋でモノづくりに取り組み、地域貢献を続けてきた点が評価された」と語っている。
受賞製品「ムービンクール」はどこでも快適に
ムービンクールの特徴は、家庭用エアコンでいう室内機と室外機を一体化し、設置工事を不要にした点にある。これにより、必要な場所に即座に移動できるため、工場や建設現場、イベント会場など、従来空調の導入が難しかった環境でも快適性を実現した。
さらに、猛暑が続く近年、スポットクーラーの需要は急増している。これまで需要が少なかった東北や北海道でも導入が進み、販売台数は多い年で2万2,000台に達している。
特に北米市場向けモデルは、盗難防止のためIoTモジュールとGPS機能を搭載し、スマートフォンから24時間365日遠隔監視・操作が可能である。気候に応じ遠隔で操作し、省エネ性を高めるなど、課題解決型製品とも言える。
また、製品はグリルタイプとダクトタイプの2種類を展開。グリルタイプはオフィスや病院などの空間全体を冷やす用途、ダクトタイプは工場や倉庫で作業者をピンポイントで冷却する用途となっている。
ムービンクールの製造は、熱交換器の溶接、銅パイプの接続、配線、組立まで、熟練スタッフが丁寧に作業を行う。出荷前には83項目にわたる検査を実施し、品質を徹底的に保証している。こうした厳格な品質管理が、同社の信頼性を支えている。
未来への挑戦「2030年明るい未来プロジェクト」
同社は、製品開発だけでなく「働く人ファースト」の企業文化づくりにも注力している。
2024年にスタートした「2030年明るい未来プロジェクト」では、若手社員を中心に新事業開拓・働きたい工場づくり・風土改革の3分野で活動を展開している。
約80名の社員が自発的に参加し、将来の工場をイメージしたジオラマ制作や、キッチンカーを呼んだ「秋のフードフェス」など、日常に楽しい変化をもたらす取り組みを実施している。
さらに、役員の人となりを社員がインタビューする動画企画「わくわく工場推進WG」では、一般社員が社長に直接質問することで、職場のコミュニケーションを活性化し、働きやすい環境づくりに貢献している。
次なる挑戦—電動モビリティ向け温調技術
こうした社内改革とものづくりの蓄積を背景に、同社は技術面でも未来を見据えた挑戦を強化している。
今後は、電動化が進む建設車両やバスを対象に、バッテリー性能を最大限に引き出す温調装置の開発に取り組む計画だ。過酷環境下でもエネルギー効率と信頼性を両立させる温度マネジメントは、脱炭素化と安全性向上の両面で社会的意義が大きい。
地域に根ざした確かなものづくりを起点に、同社は新たな領域での価値創造に歩を進める。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2025年12月21日放送)
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