自動車用ホーンの国内トップメーカー ~ 丸子警報器(株)<2025・10・19>

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最終更新日: 2025年10月19日

 丸子警報器(株)(上田市)は、自動車用ホーンの専門メーカーとして、国内シェア約4割を誇るトップ企業である。創業以来、保安部品としてのホーンの重要性を追求し、開発から製造、検査までを一貫して社内で行う体制を築いてきた。

 玄関には、創業当初の船舶用ホーンから昭和時代の製品までが陳列されており、技術の進化と開発の歴史を感じ取ることができる。中には、トヨタ2000GTの純正ホーンなど、現在でも鳴らすことができる年代物もあり、マニアからの問い合わせもあるほどである。 

 こうした歴史的製品群は、同社が長年にわたり蓄積してきた音づくりの技術力と品質へのこだわりを象徴している。

一貫生産体制と品質へのこだわり

 ホーンは安全に直結する保安部品である。そのため、国の保安基準や自動車メーカーの厳しい品質基準を満たす必要がある。同社では、製品開発と同時に生産工程の管理も重視し、開発から製造までを一貫して行うことで、製品の品質を常にチェックできる体制を整えている。

 ホーンには大きく分けて「渦巻き型」と「ディスク型」の2種類があり、それぞれ高音・低音のセットで車両に取り付けられる。渦巻き型は音質が良く、高級車に採用されることが多い。一方、ディスク型はコスト面に優れ、大衆車に広く使用されている。こうした製品特性に応じた設計・製造を社内で完結できることが、同社の強みである。

自動化と人の力の融合

 製造ラインは自動化が進められており、5台の機械が連なって1ラインとなっている。現在、4ラインで月間約60万個のホーンを生産している。

 一方で、従業員が手作業で組み立てるラインも維持しており、製造終了した車両向けの補修部品としてのホーン供給にも対応している。

 このように、自動化による生産性向上と、人による厳格な検査を両立させることで、品質とスピードの両面で高い現場力を発揮している。

多様な試験設備と耐久性への対応

 同社では、ホーンが様々な環境下でも確実に作動することを保証するため、温度・湿度変化、防水性、振動耐久、吹鳴耐久など多岐にわたる試験を自社設備で実施している。特に海外ではホーンを頻繁に使用する地域もあるため、高耐久性にも対応している。

 無響音室では周囲の雑音を完全に遮断し、ホーン本体の音圧や音質を正確に測定している。塵埃試験室では粉塵環境下での耐久性を確認し、急激な温度変化や重力の数倍の振動にも耐えられるかを検証する装置も完備している。

EV化への対応と今後の展望

 今後の自動車市場ではEV(電気自動車)の普及が進むと予想されており、ホーンの配置や音の抜け方に新たな課題が生じている。EV車では構造上、ホーンの音が車外に届きにくく、法律で定められたレベルを満たすための再設計が求められている。

 同社では、信州大学との共同研究や地域の外部団体との連携を通じて、さらなる自動化と技術革新に取り組んでいる。ホーン専門メーカーとしての価値向上を目指すとともに、ホーン以外の製品開発にも挑戦し、事業の多角化を図っている。

 既存製品を磨き上げながら、次世代ホーンの開発や新分野への事業展開にも積極的に挑戦する両利きの経営が、同社の持続的成長を支える確かな推進力となっている。

 

(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2025年10月19日放送)

 

 

 

 

 

 

 

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