地域の食文化を次世代に伝える「100年フード」<2025.9.22>

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最終更新日: 2025年9月22日

文化庁の「100年フード」

 皆さんは「100年フード」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、文化庁が創設した食文化の認定制度で、2021年に始まった取り組みです。今回は全国各地で推進されている100年フードについて、制度の内容や県内で認定を受けている郷土料理などを紹介したいと思います。

地域の食文化を次世代に伝える

 100年フードとは、全国各地の多様な食文化の継承や振興への機運を醸成するため、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化を次世代に残していく試みです。各地の自治体や食関連の機関・協議会などが応募した地域の食文化を文化庁が認定する仕組みで、毎年有識者による審査が行われ、これまでに全国で300件が100年フードとして認定されています。
 認定されると、100年フードのロゴマークの使用が認められ、マークの入った商品の販売に加え、認定を受けた各団体のウェブサイトやSNS、そしてテレビ・ラジオや新聞の報道などを通じて広くアピールできるようになります。さらに、100年フードの公式ウェブサイトや文化庁主催のイベントなどで各団体の活動事例が発信され、郷土料理への注目度を高めることができます。
 認定される主な基準としては、地域の風土や歴史・風習の中で個性を活かしながら創意工夫され育まれてきた地域特有の食文化で、世代を超えて受け継がれ、食されてきたものなどとなっています。また、江戸時代以前や明治・大正の頃から続くような既に100年に達する歴史を持つ郷土料理だけでなく、地域のB級グルメなど昭和以降になって生み出された食文化でも、100年を超える継承を目指すものであれば対象になります。

個性豊かな長野県の100年フード

 長野県内では、現在9つの食文化が認定を受けています(参考:長野県の100年フード)。長い歴史を持つものでは、飯山の「謙信ずし(笹ずし)」、佐久の「矢島凍み豆腐」、茅野の「献上寒晒しそば」、飯綱町など北信地域の「やたら」、阿南町など南信州の「御幣餅(五平餅)」、そして小布施からは「栗菓子文化」と「丸なすおやき」の2つとなっています。さらに、比較的新しい食文化として、上田の「美味だれ焼き鳥」と伊那の「ローメン」も認定されています。
 認定を受けた地域や団体は、100年を超えて未来への継承を目指すさまざまな取り組みを行っています。例えば、先ほど紹介した北信地域の「やたら」は、なす・きゅうり・みょうがなどの夏野菜と大根の味噌漬けを細かく刻んで混ぜ合わせた郷土料理ですが、特に飯綱町では毎年夏に町内の飲食店でやたらを使った料理の食べ比べができる「やたら祭り」というイベントが実施され、今年8月の開催で14回目を迎えています。
 また、県外では、企業や大学・高校などがサポーターとなって100年フードに関する新たなメニュー開発やイベントの開催を支援する動きもあり、国内各地で食文化の継承とともに100年フードを通じた地域振興や観光促進の取り組みが活発化しています。

旅の目的にもなる食文化

 今回は100年フードについて紹介しましたが、県内には他にもたくさんの地域に根付いた郷土料理や食文化があります。そして、それらは長い時間をかけて地域の皆さんが調理や加工の技術を確立し、日常生活の中で大切に育んできたものだと思います。そうした、ご当地ならではのストーリーを持つ食文化はまさに唯一無二の地域資源であり、その地を訪れて味わいたい、体験したいと思える旅の目的にもなり得ます。
 これからも県内各地の多様な食文化が100年を超えて未来へ継承されるとともに、地域の魅力を伝える重要なコンテンツとして多くの人々を引きつけて欲しいと思います。

2025年9月22日放送 SBCラジオ「あさまるコラム」より

 

 

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