多角的事業展開と地域への貢献~タカノ(株)<2025・9・21>

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最終更新日: 2025年9月21日

 タカノ(株)(長野県上伊那郡宮田村)は、1941年に創業された歴史ある企業である。創業当初はバネの製造を主力としていたが、現在ではオフィス家具、医療・福祉機器、エクステリア、画像計測装置、農業・食品開発など、計10部門にわたる事業を展開している。 

 各部門において、独自の技術力と開発力を活かした製品づくりが行われており、地域社会と産業界に広く貢献している。

設計から検査まで一貫したカスタム対応力

 駒ヶ根市に位置するエクステリア工場では、ガーデン製品を中心に製造を行っている。

 最大の特徴は、顧客の要望に応じたカスタム対応力である。製品の寸法や仕様は顧客ごとに異なり、設計段階からCADデータを用いて個別対応が行われる。

 加工工程では、アルミ型材に対して「穴明け」処理が施されるが、穴の位置や数は製品ごとに異なるため、NC制御による高精度加工と、最終的には人の目による検査が併用されている。

 縫製工程では、レーザー裁断機を用いて天幕生地を切断し、ミシンによる縫製が行われる。レーザー裁断により、ミリ単位の精度で生地を加工することが可能となっており、これにより製品の耐久性と美観が両立されている。

 完成品は、組立後に多項目にわたる品質検査が実施される。検査項目には、寸法精度、縫製の強度、撥水性、耐風性などが含まれ、すべての製品が出荷前に人の目と手で確認される。

 代表的な製品には、強風時に自動開閉するベンチレーション機構付きパラソル「ステラ」がある。ベンチレーション機構は、風圧を逃がす構造を持ち、転倒や破損を防ぐ設計となっている。また、連結可能な日よけ「リパーロ」は、モジュール構造により自由な形状設計が可能であり、公共空間や商業施設での導入が進んでいる。

ナノ・ミクロン領域に対応する世界最速の検査技術

 宮田村の南平工場にある画像計測部門は、約40年前に発足した。液晶テレビのカラーフィルター検査装置の製造から始まり、現在では半導体ウェーハの検査装置の開発・製造を主力事業として展開している。

 半導体ウェーハとは、微細な電子回路を形成するための基板であり、検査装置はその構造物の高さを1ミクロン以下の精度で測定する。同社の装置は、干渉計技術と画像解析技術を融合させることで、ナノレベルの高さ差を非接触で高速に検出することが可能である。

 特筆すべきは、世界最速で計測可能な性能である。従来の装置では数分を要する検査が、同社の装置ではその1/3以下の時間で完了する。これは、独自開発の光学系・センサー・画像処理アルゴリズムによるものであり、装置のコア技術はすべて社内で設計・製造されている。

 さらに、温度変化による測定誤差を抑えるため、装置内部の構造材に熱膨張率の低い石材を採用している。これにより、±1℃の温度変化による誤差を極限まで抑制し、安定した計測精度を実現している。

 販売後のサポート体制も充実しており、導入先の工場で装置が停止することがないよう、遠隔監視・予防保守・現地対応を含めた包括的なサービスが提供されている。

SDGsへの取り組み~端材を活かした教育支援・地域活性化

 エクステリア製品の製造過程で発生する端材を活用し、トートバッグやクッションなどを製作している。オフィス家具を含む各種製品の生地を再利用することで、丈夫で撥水性に優れた、無限のバリエーションを持つアイテムが生まれている。

 また、端材を活用した教育プロジェクト「ミライ創造プロジェクト」では、小学生にものづくりの楽しさを伝える活動を展開している。端材を使ったワークショップや体験型イベントを通じて、持続可能な社会づくりに貢献している。

 さらに同社は、信州大学と共同開発した赤い花が咲くそば「高嶺ルビー」の栽培・食品化にも取り組んでいる。2011年には、従来よりも赤色の濃い品種の開発に成功し、満開時には駒ヶ根市と宮田村にある畑一面が赤く染まり、地域の景観づくりにも貢献している。

 この赤そばから採れるハチミツやラスクなどの食品も開発・販売しており、地域の特産品としての価値を高めている。また、栽培の手間が少なく、景観に優れることから、耕作放棄地の活用にもつながっている。毎年満開の時期にはイベントも開催され、多くの来場者が訪れている。

 同社の取り組みは多岐にわたる。今後もその挑戦は続き、さらなる価値創出が期待される。

(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2025年9月21日放送)

 

 

 

 

 

 

 

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