米国の関税引き上げの影響を最小限に< 2025・8・21 >
25年4-6月期の県内企業の業況感は悪化
当研究所が7月に県内企業の業況感を探るため、約600社に対して行った四半期別業況アンケート調査(以下、四半期調査という)によると、4-6月期の全産業の業況判断DI(「良い」と回答した企業割合-「悪い」と回答した企業割合)は、△8.2と前期から0.4ポイント低下し、2期連続の悪化となりました。業種別では、製造業DIは△25.7と同1.9ポイント上昇し、2期ぶりに改善した一方、非製造業は+6.8と1.4ポイント低下し、4期ぶりに悪化しました。非製造業は悪化しましたが、観光関連では底堅さがみられます。一方、製造業は、米国の関税引き上げ前の駆け込み需要などもあり、わずかに改善したものの、中国景気の低迷やPC・スマートフォンなどIT関連需要の減少から受注は低調で引き続き業況感は水面下の厳しい状況にあります。
7-9月期の製造業の業況感は、水面下を脱せず
7-9月の見通しについては、全産業が△14.9と今期に比べ6.7ポイント低下する見通しです。業種別では、製造業は△24.3と同1.4ポイントのわずかな上昇にとどまる一方、非製造業は△6.8と同13.6ポイント低下する見通しです。
製造業は、わずかな改善を見込むものの、中国景気の低迷やIT関連需要の弱さに加え、米国の通商政策に対する先行きの不透明感の高まりなどから、厳しい状況を脱するのは困難な状況です。特に今後は、7月23日に合意され、8月7日から発動された米国への15%の相互関税の影響をどれだけ最小限に抑えられるかが重要になります。
米国の関税引き上げは、県内製造業の約2割がすでに影響
今回、四半期調査と同時に実施した付帯調査「米国の関税引き上げの影響に関する調査」では、製造業で「既に影響が出ている」企業割合は、21.5%となり、今後6カ月以内までの影響を見込む企業も含めるとこの割合は43.7%にまで増加します。また製造業のうち「既に影響が出ている」企業割合は、輸送機械が41.7%と最も多く、次いで精密機械が29.4%、一般機械が24.3%などとなっています。このほか、「不明」についても製造業全体で40.3%となっており、今後、さまざまな影響が顕在化していくものとみられます。
長野県がまとめた2023年の輸出生産実態調査によると、長野県の米国向け輸出出荷額は約2,600億円と全体の22%に上ります。また、中国を始めとした第三国からの米国向け輸出額を含めると、さらに大きな金額に上ることが見込まれます。
今後、受注量の減少や単価引き下げといった悪影響がどの程度まで広がっていくのか、そして今後の景気全体への影響をみる上では、受注や利益の減少に加え、企業の設備投資計画の見直しの動きも注目されます。
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