生産農家と食卓をつなぐ~丸西産業(株)の挑戦<2025・06・30>
全国の契約農家とのネットワークで、365日農産物の安定供給
丸西産業(株)(飯田市)は、「生産農家応援企業」を掲げ、日本の農業が直面するさまざまな課題に向き合いながら、多角的かつ実践的なアプローチでその解決に挑んでいる企業である。
同社は戦後間もない時期に創業し、当初は農業資材、肥料、農薬などの販売を通じて地域農業を支援してきた。
やがて、南佐久郡川上村のレタス農家との出会いを契機に、単なる資材供給にとどまらず、生産から流通、加工、そして通販に至るまでのバリューチェーン全体に事業領域を拡大。現在では、農業に関する川上から川下までを一貫して担う総合農業企業として、全国的にも存在感を高めている。
最大の特徴は、150軒を超える全国各地の契約農家とのネットワークによって構築された、年間を通じた安定供給体制にある。季節ごとに適した産地を切り替えることで、レタス、キャベツ、ほうれん草などの葉物野菜を365日市場に届けている。
栽培計画においても、同社自らが主導して設計することで、生産者にとっては収益の安定、消費者にとっては品質の信頼性という双方のメリットを実現している。
時代のニーズをとらえたカットフルーツやネットショップで躍進
さらに、1998年にスタートさせたカットフルーツ事業は、同社の成長を牽引するもう一つの柱となっている。
当初はまだ市場に馴染みがなく、需要の低さに苦しんだものの、果皮や種などの生ごみが出ない利便性や、形や大きさに難がある「規格外品」の有効活用といった点で徐々に評価を獲得した。
農家支援とフードロス削減という社会的意義を両立させながら、毎年120%を超える成長率を達成し、現在では売上高40億円を突破するまでに至っている。加工はすべて手作業で行い、果物本来の風味と食感を損なわない高品質な製品づくりにも定評がある。
地域資源のブランド化にも積極的である。特に、地元・南信州が誇る特産品「市田柿」の価値を高めるため、地域住民や生産者と一体となって農林水産省の地理的表示保護制度(GI)の認証を取得。8年前に立ち上げた通販事業では、この市田柿を主力商品とし、全国の消費者にその魅力を届けている。
大手通販サイトにおいては、フルーツ部門で3年連続「ショップ・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、味だけでなく販売戦略においても高く評価されている。
グループ全体で農業の未来を切り拓く
こうした主力事業に加え、同社は、肥料・農薬・農業資材の製造・卸・小売にも注力しており、農業の現場に密着した支援体制を構築している。特に、地域の気候や土壌に適した肥料の開発や、環境負荷の少ない農薬の提案など、持続可能な農業の実現に向けた取り組みを積極的に展開している。
また、関連会社との連携も強化しており、(株)フレック丸西では青果物の加工・流通を担い、(株)ヌーベルファーム泰阜では最新技術を活用したトマトの効率的な栽培や市田柿の生産・販売を行うなど、グループ全体で次代の農業を支える体制を整えている。
「畑から食卓まで」を理念に掲げる丸西産業(株)は、契約農家と連携し、計画的な栽培により野菜を安定して消費者に届ける企業として、また地域と共に持続可能な農業の未来を創造する旗手として、今後ますます注目される存在である。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2025年6月28日放送)
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