人を大切にする経営で元気をつくる(16)~(株)エンリージョン<2025・04・24>

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最終更新日: 2025年4月24日

地域密着で、地域へのUIターン就職支援に特化

 (株)エンリージョンは、新潟市に本社を置き、新潟県をはじめ、長野県・富山県・石川県・福井県・群馬県・山梨県・滋賀県の8県を営業地域とする人材紹介会社である。特に長野県は、長野市と松本市2カ所に支社を設け、県内で積極的な営業活動を展開している。

 同社の社員のほとんどが地元へのUターン者であるため、都会からのUIターン希望者に対して、単なる企業情報にとどまらず、地元での暮らしや実体験に基づいた情報を提供することができる。大手にはまねのできない、地域密着という強みを持っているため、着実に顧客を増やし続け、増収を続けている。

「全従業員の物心両面の幸せを追求する」を経営理念に

 社長の江口勝彦氏は、経営者となってから9年間、京セラ(株)創業者稲盛和夫氏の経営を学ぶ「盛和塾」で学びを重ねてきた。京セラ(株)の経営理念に強い感銘を受けたことから「全従業員の物心両面の幸せを追求する」を同社の経営理念とした。「『全従業員の物心両面の幸せ』の実現は、(株)エンリージョンの存在意義そのものであり、従業員と交わした約束なのです」と江口社長は理念の重みを説明している。

 そして、京セラフィロソフィを基に「エンリージョンフィロソフィ・ブック」を作成している。これは経営の判断基準となっており、同時に従業員の行動指針として手元に置かれ、日常業務の中で活用されている。

 また、同社はビジョンとして、「日本を代表する働きがいのある会社になる」という方向性を掲げている。経営理念の「全従業員の物心両面の幸せ」を具現化することで、経済的な安心感や働きやすい職場環境が生まれている。こうした環境が整っているため、同社では、仕事に行くことが楽しみで、働きがいを感じる従業員が多い。

 これらが評価され、GPTW ジャパン(Great Place to Work institute Japan)が主催する「働きがいのある会社」ランキングの上位100社に2年連続で選出されている。

コミュニケーションを促進する「エンリージョンフィロソフィ・ブック」

 「仕事に行くことが楽しみ」と感じる従業員が多いもう1つの理由は、同社のコミュニケーション活動にある。コミュニケーションが良好な会社は、働きがいを感じやすく、働きやすいことに異論はないだろう。

 同社が力を入れる主なコミュニケーション活動は、次の3つだ。

 1つ目が「エンリージョンフィロソフィ・ブック」による学びと実践である。掲載された78の項目に対し、毎日1名が自らの体験の発表を行う「フィロソフィ朝礼」を実施している。各人の考えを知ることで、お互いに対する理解が深まり、社内の一体感が醸成されている。

 2つ目が従業員同士の「対話」だ。従業員の相互理解を深めるため、徹底して語り合っている。まず、期初の4月と10月に1回ずつ1日4時間を全員必須参加で、それ以外の月も1回ずつ1日2時間、プロのファシリテーターを付けて、指名参加でのオンライン対話を行っている。丁寧な対話を通じて、お互いを理解し合い、それぞれを認め合う風土が形成されている。

 3つ目が「1on1面談」だ。2カ月に一度、従業員向けアンケートを実施し、それに基づきリーダーとメンバーによる面談を行っている。アンケートでメンバーのコンディション(仕事に関する事項のほか、身体的、精神的、感情的な状態)を確認し、リーダーからのアドバイスや支援が行われる。これにより、メンバーが課題を1人で抱え込むことを防ぎ、常にベストな状態で仕事に臨めるようになっている。

働きがいを高める「称賛文化」と公平な評価

 働きがいを一層高める役割を果たしているのが、同社の褒め合う社風(称賛文化)だ。同社では年間に200〜300件の受注があるが、そのたびに朝礼で受注をした人に対して「おめでとう」と称賛の言葉を贈っている。

 また、1人1人の活躍をきちんと評価する表彰制度も充実している。四半期ごとの「トップコンサルタント賞」や半期ごとの「新規企業決定賞」、通年での昇給・昇格表彰など、毎月、四半期、半期、通年と表彰イベントを開催している。

 さらに、業績を上げた人に対してより重要なのは、明確な評価に基づく公平な処遇だ。同社では、業績評価の方法として、受注などの業績を上げた従業員に対しては、明瞭な基準に基づき、賞与で還元する方法を採用している。

 そして、業績評価とは別に、昇給、昇格に反映される評価が「フィロソフィ評価」だ。具体的な評価方法は、等級ごとに2つのフィロソフィの実践が求められる。例えば、入社間もないアソシエイト等級には「常に明るく」「仕事を好きになる」、リーダー層に位置するシニアコンサルタント等級には「常に謙虚であらねばならない」「利他の心を価値判断にする」といった指針の実践が求められる。フィロソフィの実践者を昇格させることで、「人としての正しい考え方」がより会社全体に定着することとなる。

 自社の理念に共感し、価値観を共有する人材が昇格することで、持続的な成長を実現できる組織が形づくられている。


(資料)『社員を大切にする経営で元気をつくる』長野経済研究所「経済月報2025年4月号」より一部抜粋
 

 

 

 

 

 

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