ワンタッチ操作で水道を凍結から守る(株)竹村製作所<2024・09・21>
国内トップシェアの不凍栓メーカー
(株) 竹村製作所(長野市)は、不凍栓の専門メーカーとして国内トップシェアを誇る。
1998年に開催された長野五輪のボブスレールージュやスピードスケート会場での水道設備には、同社の自動不凍栓が使われ大会を支えた。
現在は、北海道、東北6県を始め寒冷地には全て支店や営業所を設置し、長野市の工場などを合わせると13の拠点を持つ。
高性能で高いデザイン性を持つ上に設置が容易な同社の不凍栓は、これらの拠点のキメ細やかなサービスが下支えすることで国内トップのシェアを維持している。
よろずのものづくり屋さんからのスタート
同社は創業者の竹村敏男氏が「よろず機械製作修理」の看板を掲げ、1947年に手作り町工場を始めたのがスタートだ。
さまざまな機械の製作や修理を手掛けている中、普及し始めた水道がしばしば凍ってしまい、何とかならないかと機械屋のアイディアでひらめいたのが、ハンドルを1つ回すだけで魔法のように水が抜ける不凍栓だった。
アイディアマンだった創業者はその後も次々と新製品を考案し、1954年には、不凍栓の専門メーカーとして(株)竹村製作所を設立した。
ハンドル1つで水が抜ける不凍栓の仕組み
同社のワンタッチの操作で働く不凍栓の仕組みは以下のようだ。
庭によくある水撒き用などの水道をイメージしていただきたい。1メートル程度の細い柱の上部に、蛇口が付いている形態が一般的だろう。
ワンタッチの不凍栓はその柱の一番上にハンドルが付いている。これが水抜きハンドルだ。
まずこの水抜きハンドルを90度回す。
その際、ハンドルから水道管(「内筒(ないとう)管(かん)」という)の中を真下に最下部まで伸びている棒(「ロッド棒」という)が部品を回すことで、本管から蛇口に上がって来ていた水を遮断する。
同時に、遮断された管から水が抜けるよう水抜きの口を開く機構ともなっている。
閉鎖された管は、2ヶ所に穴を開けると空気が入り水が抜ける。
そのため次に蛇口を空ける。そのことで蛇口から空気が内筒管に入り、ハンドルを操作した際に開いた口から水が抜けていく。
最後に水が抜け終えたら、蛇口を閉め終了だ。
蛇口までの内筒管には水がないため、零下になっても凍ることはない。
書いてしまえば簡単なようだが、この機構を考え、作ることは大変な事だったろうと想像する。
不凍栓をつくる作業現場
まずは、長いパイプから内筒管を切り出す。さまざまな製品に合わせ、多様な長さにカットしていく。
続いて、洗浄して、乾燥をさせる。この工程で、AIカメラを使い管の内部に異物が残っていないかを確認する。こうした確認作業が生産性を上げ、安定した品質を維持している。
そして、内筒管にロッド棒を挿入し、組み上げていく。
最後にハンドルを動かすことでロッド棒が正常に動くかなどの稼働をチェックする。
機構部分の正常稼働が確認できた後には、外筒と呼ばれる外から見える細い柱と1つに組み立てる。
組み立ては、機械化できる所は機械化しているが、要所は熟練工による手作業となっている。
何事によらず、ブランド品は熟練工の手作りが必要条件のようだ。
エクステリアでもニーズに対応
同社の不凍栓の外筒は実に多彩だ。
最近は住宅のデザイン性を求めるニーズが高くなっており、それに伴い外から見える庭の水道も家の外壁同様に自分の好みのものを選びたいという声が高まっている。
そうした声に応えるために同社では15色の水栓柱を用意している。蛇口のハンドルも花をあしらったデザインのものが4種類ある。
凍らない水道になって欲しいというニーズに応えることはもちろん、家の外壁や庭造りに合わせた「選びたい」というニーズにも応える製品のラインナップとなっている。
竹村勝年社長からは番組の最後に、「今後は不凍栓を中心に、水資源とともに豊かな社会を実現させることに貢献できるよう、新たな事業にもチャレンジできればと思っている」と抱負を述べていただいた。
寒冷地信州が生んだニッチトップ企業、竹村製作所の今後の進化に期待したい。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2024年9月21日放送)
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