弱さが続く県内製造業の業況感< 2024・5・20 >
全産業の業況感は2期ぶりに悪化
当研究所では四半期ごとに長野県内企業の業況感を調査するため、県内企業約600社を対象に「四半期別業況アンケート調査」を実施しています。今回は4月に公表した24年1~3月期調査の結果をご紹介します。この調査は、各企業経営者に自社の業況について、「良い」、「悪い」、「どちらでもない」で回答してもらい、業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業割合-「悪い」と答えた企業割合、%ポイント)で業況感を表します。
今回の結果は、全産業のDIが△8.5と前期から2.7ポイント低下し、2期ぶりに悪化しました。前回調査時には、11.4ポイント低下し、△17.2まで悪化する見通しでしたが、悪化幅は小幅にとどまりました。この要因としては、非製造業の業況感の改善が挙げられます。
製造業と非製造業別では、製造業のDIは△18.4と前期に比べ8.1ポイント低下し、3期ぶりに悪化した一方、非製造業は±0.0と同1.8ポイント上昇し、2期連続で改善しました。製造業が悪化傾向の中、非製造業が全体を下支えしている状況です。
製造業の悪化を非製造業が支えている状況
製造業が悪化している要因は、コロナ禍での世界的なPCやスマホなどのIT関連需要急増の反動減が生じていること、加えて中国の景気低迷による需要の落ち込みも影響しています。また、足もとでは国内の一部完成車メーカーの生産・出荷停止が、県内製造業の生産面にも影響を与えています。ただ生産停止の影響は5月以降、本格稼働していく見通しであり、今後はIT関連需要の動向が焦点になっていくと思われます。
一方で非製造業が改善した要因は、新型コロナの影響が薄れ、観光需要が持ち直していることや、物価上昇によるコスト上昇分の販売価格への転嫁が大企業を中心に進んでいることなどが挙げられます。
製造業大企業のDIは、改善見通し
こうした中、来期4~6月期の見通しでは、製造業は、中国景気の減速やIT関連需要の弱さが続くとみている企業が多く、DIは悪化する見通しですが、このうち規模別では大企業製造業のDIについては改善見通しとなっています。一方、非製造業は、観光面で国内客やインバウンド需要は底堅いものの、人手不足やコスト上昇の影響からDIはやや悪化する見通しです。これまで景気を下支えしてきた非製造業の先行きに慎重な見方が広がり始めている中で、そろそろ製造業の業況感の持ち直しを期待したいところです。
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