山とのふれ合いで森林維持の第一歩を< 2023・7・25 >

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最終更新日: 2023年7月25日

7月は信州の山を考える月

   毎年7月15日から8月14日は、「信州 山の月間」、そして7月第4日曜日は、2014年から始まった「信州 山の日」です。この時期に家族で山へ出かけたり、改めて山の恵みに触れ合うことを通じて信州の貴重な資源を再考する良い機会と言えます。
 山や森林には、日ごろ私たちがあまり意識していない沢山の恩恵があります。例えば、山の土壌に水を貯えることで水不足の調整や洪水を緩和する効果や、光合成によって森林が二酸化炭素を吸収することにより地球温暖化を防ぐこと、そして我々が生きるための酸素を生み出すといったさまざまな機能です。今後もこのような恩恵を享受するためにも、一人ひとりが森林環境を維持できるよう、接点や関心を持っていくことが重要です。 

森林サービス産業という新たな動き

 こうした森林への関心を高めるものとして森林税は身近なところです。このほか、国内では2019年から林野庁や関連団体が中心となり、森林資源の1つである森林空間を活用し、新たな産業化を目指す「森林サービス産業」という取り組みが進められています。
 森林サービス産業とは、若者から高齢者までの多様な生活者が、さまざまな森林資源を活用することで、健康・観光・教育などのサービスや産業を複合的に生み出し、地域の価値やブランド力を高めようとするものです。これまで森林と言うと、林業、木材産業のみがイメージされがちでしたが、新たな視点から林業を捉え直し、林業を成長産業へとつなげるとともにその基盤を支える山村地域の振興や森林資源を利用して安定した雇用や収入機会・確保を目指そうとしています。
 期待される事例としては、森林空間 (山村地域)と企業の健康経営や企業研修・教育、スポーツ、癒し、幼児教育といった健康・観光・教育などとの連携です。
こうした取り組みに対し、我々生活者も積極的に参加することで、厳しい経営環境にある林業・木材産業の雇用や収入機会が増え、さらには山村地域の経済が活性化していくことで、森林環境の維持にも貢献できます。

ハチドリの一滴がもたらすもの

 これら森林などを含めた環境問題を考える中で、しばしば登場するのが中南米の先住民に伝わるハチドリの話です。多くの動物が住む森が火事になり、ほとんどの動物たちは逃げ出します。しかし、小さなハチドリだけは、くちばしで小さな一滴一滴を運んでその火事を消そうとします。多くの動物たちは、ハチドリの行動を意味のないことだと笑います。でもハチドリは自らが今できることをすると答えたという短いけれどとても深い話です。
 一人一人の行動が変化することで森林サービス産業は拡大していきます。まずは山や森林を考え、触れ合う、こうした小さな行動や取り組みを一人ひとりが実践することが長野県の森林環境を将来に渡って維持していく上での大切な一滴になっていくのだと思います。
  

(初出:2023年7月19日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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