人手不足が観光回復の足かせに< 2023・5・18 >

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最終更新日: 2023年5月18日

県内全産業の業況感は2期ぶりに改善

   当研究所では、長野県内企業の足元や見通しの業況感を探るため、四半期ごとに業況アンケート調査を実施しています。同調査によると、23年1~3月期の県内企業の業況判断DIは、全産業が△2.0となり前期から2.6ポイント上昇し、2期ぶりに改善しました。製造業が△13.6と2期連続で悪化した一方、+8.0と4期連続で改善した非製造業が押し上げた格好です。中でも観光関連業の改善が目立っています。 

明るさが見え始める観光関連業

 23年1~3月期の飲食・旅客・宿泊などの観光関連業のDIは、4期連続で改善しプラス水準となっています。こうした改善が続いてきた背景には、昨年4月に開催された善光寺御開帳といったイベント効果に加え、新型コロナに伴う行動制限がなくなったことや全国旅行支援などによる観光関連需要の増加が挙げられます。
 今後の見通しについては、いずれの業種も大きく落ち込みマイナス水準となる予想の中、大型連休の需要増加もあり観光関連業はプラスを維持する見通しです。

人手不足でフル稼働できない観光関連業

 明るさが見え始めている観光関連業ですが、足もとでは人手を確保できないといった大きな課題もあります。2020年の新型コロナ感染拡大以降、行動制限により観光需要が急激に減少したため、雇用の過剰感が一気に高まり、人員調整をせざるを得ない状況となりました。しかし、新型コロナ感染拡大が次第に収まり、22年3月のまん延防止等重点措置の全面解除を最後に、年末には行動制限措置がなくなりました。さらに国の支援策の後押しもあり、観光需要が急速に戻り始め、宿泊業や飲食業など観光関連業では、一転して人手不足の状況になりました。
 観光需要の高まりを受け、本来ならフル稼働でお客さまを迎え入れたい状況ですが、人手不足により稼働率を下げて営業せざるを得ない企業が多くなっています。
今後も人手不足の状況は続く見込みであり、厳しい経営環境が続くことが予想されます。戻り始めた需要を継続的に取り込むためには、限られた人員の中で、お客様への満足度を落とさないようサービス内容、事業運営の在り方を工夫・改善していく必要があるでしょう。
 また、今後さらに付加価値を高めていくためには、AIによる社内の自動化対応に加え、地域・業界・異業種との連携により、デジタルを活用し集客などで共有できる部分はないか模索していくことも求められるでしょう。
  

(初出:2023年5月17日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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