変わる家族の形~片田舎だけでない一人ぼっちのお婆ちゃん~<2023・05・12>
片田舎での現象ではなくなっている
先日、親戚の法事で県内のとある村を訪れた。
その村もご多分に漏れずに過疎化が相当に進んでおり、また、道で会う人もほとんどが高齢者だった。
親戚の叔父は「最近では、お婆ちゃんの一人暮らしの家が随分と増えてしまっている。こんな悲惨な村はそんなにないでしょう。困ったもんだ」と私にこぼした。そこで私は少し考え込んでしまったのだが・・・
確かにこの村の現象はその通りだが、叔父の「こんな悲惨な村はそんなにないでしょう」という感想は現実と少々異なっている。というのも、この村で起こっている現象はこの村に限った事ではなく、社会全体に共通した現象だからである。
1人暮らしの家族が急増している
家族の形態など普段はあまり考えることはないが、人口統計上では5つに分けられている。
「単独世帯(1人暮らし)」、「夫婦と子からなる世帯」、「その他一般世帯(お爺ちゃんお婆ちゃんなどとの3世帯同居など)」、「夫婦のみの世帯」、「一人親と子からなる世帯」、この5つだ。
長野県には、夫婦と子からなるファミリーと呼ばれる世帯が最も多いという漠然としたイメージを持っている人は少なくないと思うが、現状は25%程度だ。先の村のように最も多い家族の形は、1人暮らしで約30%となっている。その内およそ3分の1が65歳以上の高齢者で、特に女性の一人暮らしは多い。
これが現実であり、先に紹介した村だけが悲惨でもなければ、特別の事でもない。
国立社会保障・人口問題研究所(2018年の推計)の2025年の予測値として、5つの家族の形を多い順に紹介すると、一番が単独世帯で30%、2番目が夫婦と子からなる世帯25%、3番目が夫婦のみ世帯22%、4番目がその他一般世帯13%、5番目が一人親と子からなる世帯で9%となっている。
なぜこのように一人暮らしが増えたのか
昔はお爺ちゃん、お婆ちゃんらと一緒に住む3世帯家族が多かったが、戦後はこの形は崩れた。親と子供だけのファミリー層が大層となった。この親と子供だけの家族も子供が独立すれば家を出る。残された親が年を取り、どちらかの死亡とともに1人になる。そして高齢化の進展から、高齢者の一人暮らしが目立つようになっている。特に長寿の女性の一人ぐらしは多い。
もう一つが、結婚しない人が増えていることだ。30代から50代の一人暮らしが多くなっている。
このようなことを背景に一人暮らし世帯は増えてきた。
今後もこの核家族化、高齢化、未婚者の増加といった傾向は変わらない。そのため、一人暮らしは増えていく。
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、長野県では2040年には33%に、全国では40%に増加する見通しだ。
一人暮らしの増加に伴う変化・・・
1人暮らしの増加で、消費の形も変わってきている。
コンビニ、スーパーなどでは一人用の総菜を多く置くようになっている。「おひとりさま消費」と呼ばれ、外食、デリバリー、カラオケなどで一人での利用が増加している。
一方で課題も多い。
これまで日本では病気や介護、貧困などの生活上のリスクに対しては、家族がセイフティネットとしての役割を果たしてきた。しかし、1人暮らしでは、これらのセイフティネットに期待することができない。
病気や介護、貧困に対しては、社会全体で支え合う社会保障の役割がより大きくなってきている。高齢者の見守りなど、地域コミュニティの役割も期待される。「1人暮らしの高齢者が幸せに暮らせる社会づくり」というのが当面の課題だ。
ただ、最初から社会にお任せというのはいかがなものか。
まずは別居している親に対して朝に晩、電話をかけてみることなどから始めてみるべきではないか。
(初出)SBCラジオJのコラム2023年5月12日放送
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