人材育成に向けて重要な時間づくり< 2023・3・20 >

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最終更新日: 2023年3月20日

有効求人倍率は1.58倍と引き続き1倍超え

   長野労働局が公表した「最近の雇用情勢」によると、長野県の1月の有効求人倍率は1.58倍と引き続き1倍を超えており、求人数が求職者数を上まわる状況にあります。また、企業が求める具体的な求人の内容について職業別にみると、「生産工程の職業」が最も高く、製造業の現場での労働力が大きく不足していることがわかります。
 こうした人材の確保難の状況は、高校生の採用状況からもみてとれます。長野労働局職業安定部が公表している「新規高等学校卒業者の卒業年次別・ブロック別 求人・求職・就職内定の状況」(1月末時点)によると、2023年3月卒業の学生に対する求人数は全体で7,401人と前年に比べ増加しています。産業別では、製造業が3,347人と全体の半分近くを占めていますが、就職内定者数は1,434人と求人数の半分に届かない厳しい状況になっています。 

人材育成を行う上で課題「指導する人材」の不足

 こうした人材の獲得が難しい中での対応方法としては、自社にいる人材を育成することが挙げられます。
当研究所が2023年1月に行った県内製造業の約300社から回答を得たアンケート調査によると、人材育成における各社の取り組み内容としては、「OJT制度」が最も多く、次いで「社内研修」、「資格取得奨励」などさまざまな取り組みが実施されています。ところが人材育成を行う上での課題として、「指導する人材がいない」、「生産活動の支障となるので、従業員を研修等に出せない」などが挙げられており、指導する人材が不足していることや、社外研修に出す余裕がないなど人材育成の環境が作られていない状況がうかがえます。

時間づくりに向け重要なデジタル化への対応

 今後も労働力人口の減少が続いていくことは避けられない見込みです。現在も企業間での人材の争奪戦は激しくなる一方であり、こうした状況が大きく改善することは難しいとみられます。
 そのため人材育成に対する課題を解決するには、企業自らが人材育成のための時間を生み出していく他はありません。時間づくりのためには、デジタル化を進めていくことが1つの方向性です。また、アンケートでデジタル化により解決したい課題を尋ねると、「業務プロセスの効率化とスピードアップ」や「迅速な業績把握(リアルタイム経営)」、「コストダウン」等となっており、時間づくりに向けた各企業の意向が伺えます。また、これらに向けた具体的な取り組みとしては、社内の事務作業や工場のデジタル化が必要となります。この点についての取り組みを尋ねると、半数の企業が「社内の事務作業や工場ともに進めている」との回答であり、4割の企業が「社内の事務作業が中心(工場は未着手)」との進捗状況です。ただ、従業員規模別では、100人以下の企業の半数以上で「社内の事務作業が中心(工場は未着手)」という段階にとどまっています。
 小規模製造業に至るまでデジタル化が行きわたり、人材育成のための時間づくりが成されていくことが望まれます。
  

(初出:2023年3月17日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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