2023年の経済展望~2023年は、内需が底堅く推移する見通し~< 2023・1・27 >

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最終更新日: 2023年1月27日

2023年の日本経済は、個人消費と設備投資の動向が鍵

   2022年の日本経済を振り返ると、新型コロナウイルス(以下、新型コロナという)や物価上昇の影響があったものの、国内外での設備投資需要の増加や半導体を中心としたIT関連需要が堅調だったことなどを背景に緩やかながら持ち直した1年でした。
 2023年の日本経済を展望すると、外需の減速を堅調な内需(個人消費、設備投資)が支えることで緩やかな回復が続くことを予想します。内需の柱である個人消費は、物価上昇が消費マインドを冷やす要因としてあるものの、これまで抑制されてきた旅行や外食といったサービス消費が持ち直し、全体として底堅く推移する見込みです。もう1つ柱である設備投資は、外需の減速というマイナス要因はあるものの、デジタル化関連や脱炭素関連の投資が押し上げるほか、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱に伴って先送りされた投資案件による下支えも期待されます。 

2023年の長野県経済は、観光関連の復調に期待

 2022年の長野県経済を振り返ると、緩やかな持ち直しの動きが続きました。製造業では設備投資需要の増加や半導体を中心としたIT関連需要が高い水準を維持した一方、原材料価格高騰による企業収益は悪化しました。非製造業は新型コロナに伴う強い行動制限がなかったことから、持ち直しました。特に観光関連産業は、宿泊や旅客などを中心に業況は引き続き厳しい状況が続きましたが、善光寺御開帳や諏訪御柱祭が開催され、県外から多くの方が訪れ県内経済の下支えにつながりました。
 2023年の長野県経済を展望すると、製造業など外需関連の業種では世界経済の減速による影響が懸念されますが、観光など内需関連の業種は底堅い推移を見込んでいます。当研究所が調査した「23年主要12業種の展望」では、2023年長野県主要業種の見通しを以下の様にみています。
 製造業のうち「生産用機械」や「電子部品・デバイス」が世界経済の減速の影響からIT関連を中心に投資が減少するとみられ、景況感はやや下降を見込でいます。「自動車部品」と「自動車販売」は、半導体不足が解消されず引き続き完成車の生産が滞ることが予想され、低調に推移する見通し。個人消費は、「大型小売」が物価高に伴う消費マインドの低下やコスト増加による収益環境の悪化が懸念されます。一方「観光」は、年間を通して行動制限のない状況が見込まれるほか、インバウンドの回復によって観光客数が増加することから、景況感はやや上昇する見通しです。「公共工事」は国土強靭化計画に伴う防災・減災関連工事を中心に安定した工事量を維持するとみられます。「民間工事」は資材価格高騰の影響はあるものの、企業の拠点整備に加え、価格を抑えたローコスト住宅などの需要増加が見込まれ受注は底堅い見通しです。

今後の長野県経済を占う上でのポイント

 2023年の長野県経済のけん引役は全国同様、内需である個人消費と設備投資となる見込みです。こうした中で今後、両者が景気をけん引していくためには、それらの源資となる企業収益の回復が欠かせません。現状、仕入価格上昇分の販売価格への転嫁が十分でなく、企業収益は悪化傾向にあるからです。
 今後、価格転嫁が思うように進まず、企業収益が回復していかないとなれば投資の先送りや個人消費が低迷してしまうという懸念があります。企業の価格転嫁が進み、企業収益の改善により設備投資が促され、賃上げが進むことで個人消費も上向くといった好循環が生まれていくかが今後のポイントになりそうです。
  

(初出:2023年1月24日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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