「おためしナガノ」で県外IT事業者の県内移住を促進<2022.11.28>

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最終更新日: 2022年11月28日

県外IT事業者の県内移住を促進

 現在、長野県は「信州ITバレー構想」という政策の下、県内へのIT人材・企業の集積や、IT産業の振興を図っています。そうした中、県外のIT人材に県内へ「おためし」で移住する機会を提供する県の「おためしナガノ」という制度があり、この制度への参加をきっかけに、県内に移住したり、新たな拠点を設けたりするIT事業者が増えています。
 そこで今回は、この「おためしナガノ」についてご紹介したいと思います。

「おためしナガノ」とは

 「おためしナガノ」とは、首都圏など県外のIT関連事業者に、半年程度、県内に「おためし」で住み、仕事をしてもらう県の制度です。事業者が仕事をする際の共有オフィス(コワーキングスペース)の利用料や引越し代、事業に関わる交通費など1人当たり最大30万円まで補助が受けられます。対象は県外に居住していて、県内に本社や支店等の事業拠点を持っていないIT関連事業を行う個人・法人です。なお、県内出身者によるUターンでの移住も対象となります。
 県内で受入れ可能な市町村があらかじめリストアップされていて、その中から参加者が移住先を選ぶことができます。住まいについては、市町村ごとに、住居の提供や家賃補助、住居探しなどの支援が受けられます。参加者は月平均概ね6泊以上で、最短3カ月以上は県内に住んで仕事をすることが条件なので、ずっと県内にいる必要はなく、県外との2拠点生活も可能です。
 2022年度は28組(38名)の応募があり、そのうち、19組(27名)の事業者
が参加しています。

「おためしナガノ」の成果

 2021年度の「おためしナガノ」は、15市町村で24組(39名)が参加し、うち、19組が年度末の時点で県内での事業を継続しています。完全な移住には至らなくとも、県内に事業拠点を残したり、県外との2拠点生活を維持したりする参加者が多くなっています。
 この制度が始まった2015年度から21年度までの7年間では、計92組(156名)が参加し、うち、62組がそれぞれ参加した年度末の時点で県内での事業を継続しています。このように、「おためしナガノ」によって県外IT人材の県内への定着や関係人口の増加に寄与する成果が出ています。
 実際、過去にこの制度に参加し、その後県内に移住された方々にお話を聞くと、短期間で気軽に長野県での生活を体験でき、徐々に地域のことを知りながら、補助金も活用して本格的な移住に向けた仕事の準備や心構えができたことが最大のメリットだったとの事です。
 また、この制度の対象となっているIT関連事業者は、仕事をするのに大掛かりな設備を必要とせず、通信環境等が整っていれば働く場所の制限がありません。さらに、一緒に働くメンバーや顧客とはオンラインでのやり取りが可能です。従って、数カ月程度と限られた期間であっても、参加者が県内の多様な場所を自由に選んで働けるという点がIT事業者の働き方とマッチし、「おためしナガノ」の利用や県内への移住に対する魅力を高めているといえます。

今後に向けて

 一方で、移住に至らず、県外へ戻ってしまう参加者もいます。要因はさまざまですが、やはり、限られた期間で参加者本人と地域との関係が構築されず、制度の効果が生まれないと、その後の移住などにはつながらないと考えられます。そのため、県や市町村においては、例えばおためしナガノの参加者と地域の住民や企業とが定期的に交流できる場の創設や、業務のマッチングサポートなど、長期的な事業継続に資する仕掛けづくりをすることが重要だと思います。
 これからも、この「おためしナガノ」を通じて県外のIT事業者が長野県との関りを深め、県内への移住や、彼らの知見を生かした地域課題の解決などにつながることを期待します。
 なお、「おためしナガノ」の概要や同制度を活用した移住の取り組みは、経済月報2022年12月号(12/9発行予定)掲載のトピックス「『おためしナガノ』活用による県外IT事業者の県内移住」で詳しくレポートしています。ぜひ、ご覧ください。 

2022年11月28日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

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