痒い所に手が届く製品供給で独走~ハーモニック・ドライブ・システムズ<2022・11・27>

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最終更新日: 2022年11月28日

ロボットが動くためになくてはならない存在

 現在ものづくりを支える産業用ロボットの関節部分には、ほとんどハーモニック・ドライブ®が使われている。

 ハーモニック・ドライブ®は、一般的には波動歯車装置と呼ばれるもので、減速装置としてモーターから大きな力を取り出している。

 現在の小型精密減速機の市場では、ハーモニック・ドライブ®はほぼ100%に近い圧倒的なシェアを持つ。

 株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズは、こうした卓越した実績や技術力に後述の地域貢献が評価され、「ものづくり大賞NAGANO2022」でグランプリを受賞した。

ハーモニック・ドライブ®の仕組み

 ハーモニック・ドライブ®は3つの部品(ウェーブ・ジェネレータ、楕円状にたわむ薄肉のフレクスプライン、剛性のある真円のサーキュラ・スプライン)のみから構成されている。そのため、軽量化が可能であり、多様な機械への取り付けが容易だ。

 通常の歯車は嚙み合って動力を伝えるため、一定の隙間がなければ動かない。 

 ところが、ハーモニック・ドライブ®は、歯車の歯を相手側の歯溝の幅に次々とはめ込むことにより動力を伝える仕組みとなっているため、この隙間が全く必要ない。そうしたことから、動作部分のズレが全く生じないのだ。

 このような特質から、極めて精緻な動きが要求される医療や宇宙分野でも多くの装置で採用されている。

強さの源泉その1~技能・提案力~

 強さの源泉となっているものは、いうまでもなくその技術力だ。

 しかし、ハーモニック・ドライブ®の動作原理となっている特許は、既に50年も前に切れている。したがって特許に伴う技術ではない。

 他社の追随を許さない技術は、同社の技能と提案である。

 製造された部品を技能者が1つ1つ手に取って、顧客のニーズにマッチした動作になるよう微調整を繰り返す。図面を超えた性能を引き出しているのだ。

 そして、この暗黙知とも言える顧客ニーズを聞き出し、さらに性能が向上するよう提案をしている営業部隊がいる。

 長井啓社長は「わが社はBtoBではなく、BtoEすなわちエンジニアファーストの営業をしている」と教えてくれた。開発の段階からエンジニアに関わりニーズを聞き取り、提案を繰り返すことで「痒いところに手が届く製品」を届けているのである。

強さの源泉その2~地域の産業集積~

 同社の生産拠点がある安曇野市周辺には、多くの加工製造業が立地している。

 この産業集積を活用することで、ハーモニック・ドライブ®の性能は高みを維持している。
「地域の協力企業のお陰でわが社の競争力は維持されている」と長井社長は教えてくれた。

 自社の近隣に協力企業が集積していれば、密接なコミニケーションが容易であるし、何か事が起こった際にも解決には多くの時間を要さない。

 遠方でもより単価が安い企業と取り引きをすることは当然だが、日ごろから切磋琢磨し合う中で地域に協力企業があるという意味は大きい。

企業理念に「共存共栄」「社会への貢献」などを掲げ

 同社は企業理念に「1.個人の尊重」「2.存在意義のある企業」「3.共存共栄」「4.社会への貢献」を掲げている。

 ハーモニック・ドライブ®を製造し販売する社員を先ず大切にし、それが持続できるよう他社にはない独創性を追求している。そして、協力会社、顧客との共存共栄を図り、社会的存在としての義務も果たしている。

 近年、人的資源への投資の必要性が声高に言われているが、同社では既に理念でその重要性を謳い上げ、実践してきている。

 世界シェアトップという偉業は、こうした理念に裏打ちされた「三方よし」の経営が実現したものだろう。


(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2022年11月27日放送)

 

 

 

 

 

 

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