高まる観光関連業の雇用の不足感< 2022・11・17 >

印刷

最終更新日: 2022年11月17日

7-9月期の業況感は製造業、非製造業ともに改善

   当研究所では四半期ごとに長野県内企業の業況感を調査するため、県内企業643社を対象に「四半期別業況アンケート調査」を実施しています。今回は10月に公表した7~9月期調査の結果についてご紹介します。この調査は、各企業経営者に自社の業況をどのように感じているかを「良い」、「悪い」、「どちらでもない」で回答してもらい、業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業割合-「悪い」と答えた企業割合、%ポイント)という形で業況感を示しています。
 今回の結果は、全産業のDIが+0.6となり、前期の△7.8から8.4ポイント上昇し、2期連続の改善となりました。業種別では、製造業が6.4 と前期に比べ14.6 ポイント上昇し、3期ぶりに改善しました。非製造業も△4.3 と水面下ながら同3.3 ポイント上昇し、2期連続で改善しました。
 製造業は、国内外でIT関連の投資需要が継続し、電子部品・デバイスや生産用機械などが好調を持続しました。上海のロックダウン(3月末~5月末)の影響による受注減少から、前期は生産用機械や自動車部品などで業況感が悪化しましたが、今期はそうした影響が薄れ、受注回復の動きもみられました。非製造業も設備投資関連の需要増加で機械器具卸が順調だったほか、観光などのサービス業も新型コロナ第7波の渦中ではあったものの、厳しい行動制限措置がとられなかったことから業況感が改善しました。 

観光関連業で雇用の不足感が高まる

 こうした業況感の改善に伴い企業の雇用環境も不足感が高まってきています。雇用の過不足状況を示す雇用水準DI(雇用が「過剰」と答えた企業割合-「不足」と答えた企業割合)は、全産業が△42.5と2期連続で不足感が高まっています。業種別では、製造業が△32.5、非製造業が△50.9とともに不足感を高めていますが、特に非製造業で高く、ほぼコロナ前の水準にまで戻りつつあります。
 非製造業の雇用水準DIを業種別にみると、サービス業が△61.8と不足感が最も高く、次いで建設業が△52.4、卸小売業が△40.0となっています。不足感の高いサービス業の中でも深刻なのが宿泊業、飲食サービス業、旅客業などの観光関連業です(図表)。
 22年1-3月期まで観光関連業は、新型コロナ感染拡大の影響により需要が大きく減少しため、不足感は和らいでいました。しかし、まん延防止等重点措置が解除された22年4-6月期以降は、厳しい行動制限がとられなくなったため、旅行需要も持ち直し、雇用不足が深刻化したものと考えられます。

全国旅行支援による需要増加でさらに不足感が高まる見込み

 今後は10月から始まった全国旅行支援の実施に伴い需要の増加が見込まれます。
観光関連業では、新型コロナで落ち込んだ業績を取り戻す大きなチャンスの時期となりますが、それを支えるための十分な人手を確保できるかが懸念されます。
 

観光関連業の雇用水準DIの推移

 

 

(初出:2022年11月16日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

関連リンク

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233