コロナ禍はピンチかチャンスか~新たな販路・製品への取り組み調査~<2022・09・26>

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最終更新日: 2022年9月26日

 経営とは変化への対応業とも言われる。何か変化があればそれに対応し、商機があれば行動する。

 当然にコロナ禍においても同様で、起こった変化が事業になると判断するなら企業は行動を起こす筈である。

 そこで、長野経済研究所では、2022年7月の四半期業況アンケート調査で県内企業に対し「コロナ禍での新たな販路開拓や新製品・新サービスのへの取り組み」を尋ねた。

新たな販路開拓の取り組みでは

 まず、新たな販路開拓だが、「自社HPやSNSでの情報発信を行った」(39.3%)、「販売チャネルの多様化を試みた」(22.1%)、「他社との業務提携をした」(8.6%)などの取り組みが見られた。

 これらの具体的内容は、以下のようなものである。

 「自社HPやSNSでの情報発信」では、機械系製造業で「営業用メルマガや自社LINEを開始」、宿泊業で「コロナ対策動画の製作・アップ」、小売業で「ウェブ見積もりの開始」などだ。

 部品加工・製造が多い長野県製造業だが、それぞれの技術をウェブ上に公表することで、大手企業がその使い方を見出してくれ取引につながったとの話を聞くことがある。コロナ禍でも、こうした成果を期待できるだろう。

 「販売チャネルの多様化」では、酒類製造業で「アンテナショップを使った直販強化」、「ECサイト開設」、宿泊業で「ECサイト開設」、小売業、飲食業で「宅配事業の立ち上げ」などだ。

 宴会などの激減で窮地に立った県内酒類製造業だが、ECサイトを活用し「家呑み需要」を大いに獲得した企業は少なくない。

 また、飲食業などによる宅配サービスは、コロナ禍では当然のように語られもしたが、課題解決のためには行動ありきである。宅配サービスの実施の有無が、コロナ禍での業績を大きく左右している。

 「他社との業務提携」では、食料品製造業で「新たに道の駅での販売開始」、住宅設備業で「仕入れ先メーカーとの協同販路拡大」、観光業で「近くの観光地との連携協力」などだ。

 困った時には、外部との連携が重要であり、藁にもすがってみるべきである。住宅設備業が行った協同のように、売れない時には、仕入先や販売先などと連携し、より多くのお客様にアプローチすることだ。それぞれにお客様がいる訳だから、単純計算では3倍になる。そのように行動した企業は、新たな販路を開拓している。

新商品・サービスへの取り組みでは

 コロナ禍での新商品・サービスは、健康・医療分野が主となるため取り組める企業は限定的であり、取り組んでいない企業が70%と多数となった。

 そうした中でも「除菌や抗菌を施した商品・サービスの開発」(16.1%)、「非接触型商品・サービス」(12.2%)、「テレワーク・在宅勤務向けの商品・サービス」(10.1%)などへの取り組みがみられた。

 「除菌や抗菌を施した商品・サービス」の具体的内容は、衣類製造業で「マスク・使い捨て作業着製造」、機械系製造業で「除菌のための噴霧器や室内換気システムの開発」などだ。

 信州大学の産学連携組織である「信州大学みらい産業共創会」では、抗ウイルス製品の開発とその製品の販路を拡大するため、加盟企業数社を交え「信州発HYBRID除菌テクノロジー」を設立した。コロナ除菌には次亜塩素酸水が有効だが、その製造業者とそれを噴霧する超音波噴霧器メーカーなどの連携体である。こうした芽がコロナ後に大輪の花となることが期待される。

 「非接触型商品・サービス」では、タクシー業で「QRコード決済の導入」、宿泊業で「自動チャックイン機の導入」などが挙げられた。

 「テレワーク・在宅勤務向けの商品・サービス」では、機械系製造業で「在宅勤務用パソコン需要対応」、宿泊業で「テレワーク向け客室の創設」、建設業で「在宅勤務用リフォーム」などだ。

 コロナ禍での大きな変化の一つが「テレワーク」の進展だろう。これを巡っては、情報通信機器やそれを行う場所が必要となる。それらを創り出す諸々の事業を併せると波及効果は大きい。

空いた時間で掃除、社員教育

 その他として、「コロナで空いた時間でお店を徹底的に掃除」、「空いた時間で社員教育」などの回答があった。

 不況がチャンスであるということは多くの名経営者によって語られるところだが、故稲盛和夫氏は「不況のたびに全従業員が結束し、ひとつになって頑張ることによって、次の飛躍の足がかりが作られていく」という内容の事を述べられている。正にそれが掃除による5Sの徹底であったり、社員教育だろう。県内の宿泊業者からは、社員教育をすることでお客様サービスの質が上がり、客単価を上げることに成功したという話も聞かれた。


 世の中は変化が常だが、何の問題意識も持たずにいるなら変化は脅威でしかない。

 自社の強みを知っている者にとっては、そうした変化の中にチャンスが見えてくるのだと、とある経営者から教えていただいたことがある。「それは白い帽子をかぶった人混みの中から、赤い帽子をかぶった人を探すぐらいに容易だ」と表現された。

 自社の強みを熟知した彼は、コロナ禍でいくつの「赤い帽子」を見つけただろうか。


(資料)SBCラジオ「Jのコラム」(2022年9月26日放送)
 

 

 

  

 

 

 

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