医療現場を支え150年「サクラ精機」<2022・09・26>

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最終更新日: 2022年9月26日

 サクラ精機(株)(千曲市)は、医療用及び産業向け滅菌装置、洗浄装置の開発、製造、販売、サービスを一貫して手掛ける会社だ。

明治に創業、戦時中に千曲市に疎開

 同社の起源は、1598(慶長3)年に大阪府の泉州堺で薬種商として事業を始めたことに遡る。

 江戸時代に本社を江戸(現在の中央区日本橋)に移し、1871(明治4)年に医療機器の販売を開始した。

 その後、医療機器の製造も始めたが、戦時中に政府から疎開命令が出されたことを機に、1944(昭和19)年に千曲市に疎開し、現在は同市内に4つの工場を設置するに至っている。

世界シェアの5割を誇る検査装置

 同社は、体の組織を顕微鏡で観察するための「病理標本」を作製する自動化装置を開発・製造している。

 体の組織はそのままでは顕微鏡で見ることができないため、まず、組織に含まれる水分や脂肪を抜き、代わりにパラフィン(半透明の蝋状の固体で水に溶けず化学的に安定した物質)を浸み込ませ安定させることが必要となる。

 パラフィンが浸み込んだ組織検体をミクロン単位の薄さに切って、スライドガラスに乗せ、染色を施したものが「病理標本」となる。

 「病理標本」を作製する作業は微妙な調整が必要なことから、従来手作業でしかできないとされてきた。そうした常識を覆すような開発であったため、同社の自動化装置は世界で5割のシェアを占めている。

手術現場を支える洗浄・滅菌装置

 手術器具などの洗浄技術でも、同社は独自の製造・活用ノウハウを多く蓄積している。

 洗浄装置は、手術で使用したハサミや鉗子などに付着した血液や脂肪、タンパク質を除去し、器具を再び使用可能な状態にする装置である。そのため、手術を行う病院にはなくてはならない装置だ。同社の洗浄装置はそれらをジェット水流と超音波により一度に洗浄することができる。

 最終段階で必要となるのが高温・高圧での滅菌処理だ。大気の2倍の圧力と135℃の高温環境を作り、器具のすき間に至るまで完全な滅菌を行う。この原理は「圧力なべ」と同じものであり、大型化するにつれ技術の難易度は上がる。同社では部品の加工から組み立てまで一貫生産で装置を製造出来る体制を持っている。そうした「ものづくりの総合力」で作り上げた大型滅菌装置は国内で7割のシェアを誇る。

正しい使い方・メンテナンスを伝える教育センター

 医療機器は正確な知識を持ち、正しい使い方やメンテナンスをしていかないと大きな事故につながる危険性がある。そのため、それらを教えるため1978年「教育センター」を千曲市内に設置し、これまでに4万7,000人の研修生を受け入れてきた。

 当社にとって、医療機器の正しい使い方とメンテナンスを伝えていくことは、高品質の製品を提供することと同様に重要なのである。

 売って終わりでない「ものづくり」が同社の強みを形作っている。


(資料)SBC信越放送「明日を造れ!ものづくりナガノ」(2022年9月18日放送)

 

 

 

 

 

 

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