脱炭素への県内企業の取り組み状況< 2022・9・21 >

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最終更新日: 2022年9月21日

県「ゼロカーボン戦略」策定から1年が経過

   2050年のカーボンニュートラルの達成に向け、長野県が策定した「ゼロカーボン戦略」が公表されてから1年が経過しました。本戦略は、実質ゼロカーボンの2050年までの達成に向け、中間年となる 2030 年度までを計画期間としています。目標の指標として、(1) 温室効果ガス総排出量、(2) 最終エネルギー消費量、(3) 再生可能エネルギー生産量、(4) エネルギー自給率の4つの目標値を定めています。このうち特に重要な温室効果ガス総排出量の2030年度の目標値は、基準年度となる2010 年度に対し53%の削減としています。 

脱炭素への「取り組みをしている」割合は半数に届かず

 当研究所では7月に「県内企業の脱炭素への取り組みに関する調査」を実施し、県内企業に脱炭素に対する対応状況について尋ねました。
 まず脱炭素への取り組みは「具体的な目標を設定し、取り組んでいる」が19.0%、「目標設定はないが、取り組みを始めている」は26.3%となり、両者を合計した「取り組みをしている」割合は45.3%と半数に届きませんでした。
 脱炭素への「取り組みをしている」企業の主な内容は、「照明や冷暖房の節電」が77.9%と最も多く、次いで「省エネ設備の導入」が71.4%、「自社のエネルギー使用量の把握」が59.1%となりました。一方で脱炭素に向けた取り組みの第一歩と考えられる「自社の温室効果ガス排出量の把握」については33.8%にとどまりました。

課題は、「どのレベルまで対応が必要か分からない」が最多

 最近ではサプライチェーン全体での脱炭素を目指す動きがグローバル企業で増加しています。サプライチェーンに組み込まれている中小企業の経営にも何らかの影響があることが予想されます。
 取引先からの脱炭素化の要請状況について尋ねると、「既に求められており、対応している」が9.5%と約1割となった一方、「求められたことはないが、今後は可能性がある」が66.5%と最も多くなりました。全体的にまだ取り組み要請は少ない状況ですが、「今後は可能性がある」企業の割合が高いことから、いずれ取り組みが必要になると感じている企業が多いことがうかがえます。
 また、脱炭素へ取り組む上での課題としては、「どのレベルまで対応が必要か分からない」が60.2%と最も多く、次いで「取り組むための専門知識やノウハウが不足している」が58.5%となりました。こうした課題に対し、脱炭素に向けた必要な支援策については、「設備投資への補助」が73.6%と最も多く、次いで「情報提供(国や業界の動向)」が64.5%となりました。

脱炭素に向けて積極的な支援と情報発信を

 県内企業の脱炭素に対する足もとの取り組み状況を探ってみると、具体的な目標を設定し着実に取り組みを進める企業は、まだ一部にとどまっています。また取り組む上での課題は、「どのレベルまで対応が必要か分からない」や「取り組むための専門知識やノウハウが不足している」などが多く挙げられているほか、求められる支援内容については、「設備投資への補助」のほか情報提供を望む声が多くなっています。
 まずは2030年の県の目標達成に向けて、積極的な支援と情報発信を行うことで各企業の取り組みを推し進めていくことが求められます。

 

(初出:2022年9月16日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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