「熱」が鋼を変える~熱処理のフロンティア企業~<2022・05・30>
73年の歴史を持つ株式会社丸眞製作所(本社:岡谷市)は、創業当時、自転車部品を熱処理で強固にできないかという取引先からの依頼をきっかけに熱処理を始め、長野県初の熱処理企業となった。
以来、熱処理、表面処理のフロンティア企業として、県内外に多くの取引先を開拓している。
熱処理はものづくりの縁の下の力持ち
熱処理をすることで、金属は簡単に曲がったり、すり減ったりしない強固な性質を持つようになる。
このため、同社の熱処理後の製品は、自動車のミッション関係の部品など、常にすれたり、叩かれたりする箇所で使われている。
自動車以外にも工作機械やロボットの部品、半導体を製造する装置の部品など幅広い分野からの受注も多い。
熱処理は、多くのものづくりに必要となる工程であり、ものづくりの「縁の下の力持ち」として、産業を支えている。
硬軟自由自在、多様な熱処理方法
熱処理方法は実に多様で多彩な機能を生み出す。
例えば「浸炭焼入れ」という、鉄の表面に炭素を浸み込ませて焼き入れをする技術がある。
この処理により、表面は強靭な鉄でありながら、中は柔軟性があり、長く使っても折れたり、割れたりしない部品を作ることができる。
熱した鉄をゆっくり冷やし軟らかくする「焼鈍(しょうどん)処理」という方法もある。
この方法により、鉄を軟らかくし加工しやすくするほか、部品のひずみも取ることができる。
耐摩耗性の向上を図る表面処理
同社は「熱処理」のほかに「表面処理」技術も得意としている。表面処理とは、薄く硬い膜をコーティングする処理だ。
「イオンプレーティング」という表面処理を施した部品では、焼き入れで得られる硬さのさらに2倍から3倍ほど硬い被膜を表面に付けることができる。数ミクロンと非常に薄い被膜で耐摩耗性の向上を図ることができるのだ。
同社では、この技術を磨くことで、多くの取引先を開拓してきた。
多品種少量時代の強みは「生産管理力」
多用な熱処理や表面処理などの技術的な強みを、同社の真の競争力としているものが「生産管理力」だ。
高い生産管理力を持っているからこそ、多品種少量の加工が大層となっている現在、1日に400~500種類もの多様な製品の品質を維持しながら、安定した熱処理や表面処理が可能となっている。
日本の置かれたものづくりの現場を考えると、単なる「作る」という技術ばかりではない、「生産管理技術」という技術が益々重要となってくることが分かる。
(資料)SBC「明日を造れ!ものづくりナガノ 2022年3月26日放送
長野経済研究所「経済月報2022年5月号」『ON AIR』
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