佐々木朗希投手の活躍にみる組織の人材育成<2022.4.25>

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最終更新日: 2022年4月25日

令和の怪物・佐々木朗希投手

 今シーズンのプロ野球が開幕して1カ月が経ちますが、最も大きな話題をさらっている選手といえば、間違いなく千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希投手です。3年目の今年、4月10日のオリックス戦で28年ぶりとなるプロ野球史上16人目の完全試合を最年少で達成しました。しかも、13者連続奪三振のプロ野球新記録、1試合19奪三振のプロ野球タイ記録と、まさに記録づくしの大偉業でした。さらに、翌週の4月17日も日本ハムを相手に8回までパーフェクトピッチングと、ここにきて「令和の怪物」と呼ばれる実力を遺憾なく発揮しています。
 こうした中、佐々木投手の偉業を導いた要因として球団の育成計画が注目されています。そこで今回は、佐々木投手の活躍にみる組織の人材育成について取り上げたいと思います。

佐々木投手の育成方針

 佐々木投手はロッテ入団前の高校時代から速球派投手として大変注目されていました。しかし、3年夏の岩手県大会決勝で連投による故障予防のため登板を回避。チームは敗退しましたが、佐々木投手の将来を見据えた監督の育成的視点での判断が大きな話題となりました。
 そしてプロ入団後、ロッテは佐々木投手に対して「フィジカル面の強化」と、「絶対に無理はさせない」という大きな育成方針のもと、長期的な育成計画を立てたそうです。1年目はプロで投げるための肉体づくりに徹し、実戦での登板はありませんでした。1軍のマウンドに上がってからも、佐々木投手の身体への負担や故障のリスクを見極めながら投球数や登板間隔を慎重に判断しており、その姿勢は揺らぐことがありません。実際、史上初の2試合連続完全試合の期待が高まった日本ハム戦では、投球数や疲労度合いを考慮し達成目前にも関わらず降板となりました。
 こうしたロッテの人材育成方針は、他の仕事現場や組織でも参考になる点がありそうです。

若手指導のための育成計画が大切

 当研究所が企業向けに実施している社員研修で、参加者の方々に人材育成や後輩指導の課題について尋ねると、「指導の進め方が分からない」という悩みが多いようです。こうした課題の主な原因の1つとして、組織としての明確な方針がないまま、全てが指導をする担当者任せになってしまっていることが挙げられます。
 明確な方針がないまま、その時の思いつきで指導をしてしまうと、指導する側は育成の進捗が整理出来ず、指導内容に「抜け」や「ダブリ」が生じてしまう恐れがあります。また、指導される側は、その場では分かったつもりでも、具体的な目標が不明確だと習得状況の把握ができずに混乱してしまう可能性があり、その結果育成が遅れてしまうことにもなりかねません。
 このような事態を防ぐためにも、佐々木投手を育てたロッテのように、事前に将来を見据えた「育成計画」を立てることが必要です。まずは、育成目標として「あるべき姿」を明確にした上で、しっかりと現状把握をすることにより、育成が必要な部分をはっきりとさせます。そして、策定した計画を同じ職場の人たちと共有することで、直接の指導担当者任せにせず、職場の誰もが状況に応じてサポートできる体制を構築することが大切です。

若手人材が活躍できる環境づくりを

 職業の種類を問わず、プロの人材を育てるには長い期間が必要です。従って、育成対象となる人材の能力や適性、本人の意向も踏まえつつ、まずは組織として計画を策定し、その後は計画に沿って焦らず、着実に成長できるよう組織全体で育成していくことが重要です。
 佐々木投手のような怪物と呼ばれる人材も、自分に合った環境でこそ十分な能力を発揮できると思います。私たちの企業や職場においても、若い人材が将来存分に活躍できるような環境づくりを心がけていきたいものです。

 

2022年4月25日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

 

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