移住促進戦略-職・住の整備-「麻績村」<2022・04・08>

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最終更新日: 2022年4月8日

  古くから交通の要衝として栄え、平安時代には伊勢神宮の荘園として麻績(おみ)御厨(みくりや)が設けられ、上質の麻布や栗、ナツメなどを献納していた麻績村。

 近年では、優れた自然環境や近隣都市へのアクセスの良さからベッドタウンとして、都会から移り住む人も多い。

 村の長所を生かした移住促進策で人口減少を食い止めようと奮闘される塚原勝幸村長に話を伺った。

地域おこし協力隊が定住し、産業を興す

 麻績村へ応募してくる「地域おこし協力隊」の若者は、そのまま移住・定住する者も多い。

 収入の多寡よりも好きな場所で、自分らしく生きがいを持って暮らすことに人生の意義を見いだし、その住み家として麻績村を選んでいる。

 これまでに46人が「地域おこし協力隊」として村に訪れ、うち17人が移住・定住している。

 定住した17人のうち5人は就農しており、高齢化で廃業しようとしていたリンゴ農家の後を継いだり、ワイン用ぶどうや、アレルギーの原因となるグルテンの少ないスペルト小麦などの栽培に取り組んでいる。

 ワイン用ぶどうは、将来的にはワイナリーをつくり、そこでワインを加工していく構想だ。

 村でもその取り組みをバックアップして、10年後には麻績村産ワインを全国に向けて販売していくことを目指している。

新規就農者を育てる仕組みと住まい

 麻績村で農業を志す若者の多くは、3年間地域おこし協力隊として活動した後、5年間は国の新規就農者補助制度の助成金を使って農業を学びながら生活し、その後独立していく。

 就農者1人当たり年間約150万円の補助金が出る仕組みで、夫婦での就農の場合、225万円ぐらいが支給される。

 農業技術の指導は、NPO法人「おみごと」が主に担っている。このNPOは、塚原村長が役場の課長達と協力し設立したもので、「地域おこし協力隊」の農業支援を目的としている。

 この他に主に有機米や無農薬米などの栽培を行っている「OMIMO(おみも)」という団体も、新規就農者が独り立ちするためのサポートを行っている。

 移住してきた若者の住まいに対する手立てとして、「若者定住促進住宅」や「移住定住促進住宅」を50棟ほど整備して格安で提供している。これが奏功して、コロナ禍前の2019年度までは移住者が増加していた。

 移住者が増加するためには、「環境が良い」という必要条件に併せ、「職」「住」という十分条件が揃うことが必要だ。
 麻績村では、優れた環境で地域おこし協力隊を呼び込み、その後、例えば農業という「職」で一人前になるための仕組みを整え、少ない収入でも入居できる「住」も揃えている。

アフターコロナを見据えたテレワーク事業

 地域おこし協力隊という移住者増加の入り口もあるが、その他にも村を訪れる人を増やし、移住の入り口を広げるため、村では数年前からテレワークに力を入れてきた。

 その中核となるのが2018年に開設した「麻績村ゆりの木公園テレワークセンター」だ。ここでは、テレワーク用のオフィスを企業等に貸し出している。

 本センターの近くには、聖高原の別荘地や若者定住促進住宅があり、そこに滞在しながらのテレワークが可能となっている。

 「県内でテレワーク事業を打ち出している他の観光地の中に埋もれないように、当村では住宅と組み合わせることで独自性を出してアピールしています」塚原村長は麻績村のテレワークの強みをこう語っている。

 コロナ禍で打撃を受けた地域経済だが、その中でもこのように種まきが出来ているかどうかがコロナ後の時代の各自治体の方向性を決めるように思う。

(資料)『わが町わが村を語る“麻績村”』「経済月報4月号」

 

 

 

 

 

 

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