ガソリン価格の高騰について考える <2022.2.14>

印刷

最終更新日: 2022年2月14日

ガソリン価格が記録的な高騰

 資源エネルギー庁の発表によると、2022年2月7日時点の長野県内のレギュラーガソリン1リットル当たりの平均小売価格は178円でした。1週間前とは変わりませんでしたが、それまでは5週連続で値上がりしていました。
 これは、リーマン・ショック直前の2008年夏に、世界市場における投機的な動きを背景に原油価格が高騰し、県内のレギュラーガソリンの平均価格が180円台を記録した時以来の高い水準です。しかも、長野県は全国平均の171円20銭を大きく上回り、鹿児島県、長崎県、高知県に次いで全国で4番目に高い値となっています。

なぜガソリン価格は高騰しているのか

 ガソリン価格の変動は、原油の需給バランスに加え、為替の動向などさまざまな要因が考えられますが、今回の高騰の背景にはやはり新型コロナウイルスの影響がありそうです。
 県内のレギュラーガソリンの平均小売価格の推移をみると、2019年から20年の初め頃までは1リットル当たり150円台で推移していましたが、コロナの感染拡大が始まり、全国で緊急事態宣言が発出されていた20年5月の連休明けには130円まで下落しました。しかしその後、経済活動が再開され、エネルギーの需要が高まる中で、再び価格が上昇していきました。
 一方の供給要因は、原油を生産する産油国の動向が大きな影響を与えています。石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどOPEC非加盟の主要産油国でつくる「OPECプラス」は、原油の大幅な増産に慎重な姿勢です。世界的なコロナの収束が見通せない中、経済活動の停滞による原油価格の急落を避けたい意向が強く、当面は現状の増産体制を維持していくとみられています。

なぜ長野県のガソリン価格は他県より高いのか

 長野県のガソリン価格が他県よりも高い理由としては、輸送費と取扱量が関係しています。
 ガソリンや灯油などの石油製品は、海外から輸入された原油をもとに国内の製油所で製造されますが、この製油所は港に近い沿岸部にあります。長野県内のガソリンの多くは関東や東海地区の製油所から、一時的に石油製品を貯蔵する県内の油槽所に鉄道で運ばれ、タンクローリーに積み替えて各地のガソリンスタンドへ配送されます。もしくは、製油所から陸路で直接県内のガソリンスタンドへ配送されるものもありますが、いずれにしても海から遠く、面積が広くて中山間地域も多い長野県は、他県に比べて輸送費用がかかるため小売価格も高くなります。
 さらに、都市部に比べて県内はガソリンの取扱量が少なく、流通や販売にかかる単位当たりのコストが割高になってしまいます。特に、ガソリンスタンドの数や利用者が少ない地域では、ある程度の価格を上乗せしないと、経営を続けられなくなってしまいます。
 ちなみに、市町村単位でガソリンスタンドの数が3カ所以下の「SS(サービスステーション)過疎地」が、21年3月末時点で、長野県は34カ所と北海道に次いで全国で2番目に多い状況にあります。こうした事情も長野県のガソリン価格が高くなる背景となっています。

政府の価格抑制策に期待しつつも冷静な家計のやりくりを

 政府は先月からガソリン価格の高騰に対する抑制策を発動しました。価格水準に応じて元売り業者に補助金を支給して卸価格を抑制し、小売価格の上昇を緩和する狙いですが、補助金額には上限がある上、ウクライナ情勢などが原油価格のさらなる高騰を招く恐れもあります。
 我々消費者としては、抑制策の効果を期待しつつも、動向を冷静に受け止めながら家計のやりくりを考えていく必要がありそうです。また、こうした状況を機に、地域の安定的なガソリン供給の維持という課題に対しても思いを巡らせてみることが大切ではないでしょうか。

 

2022年2月10日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

 

関連リンク

 

このページに関するお問い合わせ

産業調査

電話番号:026-224-0501

FAX番号:026-224-6233