「地方創生総合戦略」で人口減少に歯止めー木祖村の当たり前の積み重ね<2021・11・22>

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最終更新日: 2021年11月22日

総合戦略の実現で人口減少に歯止めを

  どの町村長に尋ねてみても、目下最大の課題は「人口減少をいかに食い止めるか」というものである。

  とりわけ、2014年に「日本創成会議」から発表された「2040年までに896の地域が消滅する」という報告書に衝撃を受けた町村長は多い。

  翌年、これを受け国が主導し始めた地方創生施策では、全国自治体に対し「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定に努めることとした。

  自治体の取り組みには、形だけ整えたところから結果につなげたところまで様々だった。

  木祖村唐澤一寛村長にそれを尋ねると、「総合戦略に基づいてやってきたことが人口減少率の防止につながってきている。2020年の国勢調査で、木祖村の人口減少率は木曽郡内で一番低かった」と即答された。

  県内町村長に多く地方創生の成果を尋ねてきたが、最も明確に答えられたのが唐澤村長のような気がする。

  戦略の内容については、「まずは仕事を作って、若者を村に残す。そのためには結婚や子育て支援をしっかりやって、子どもを産んでもらう。そして、寝たきりゼロで健康なお年寄りを増やす。そうすれば人口を増やすことは無理でも、減少率の緩和は実現できると考えた」といたって平凡な答えが返ってきた。

  しかし、凡事徹底、当たり前のことを愚直にやり続けることが、如何に地方創生にとって重要かということなのである。

当たり前のことを愚直にやり続けるー「仕事づくり」

  仕事づくりとしては、地場産業の担い手の確保と育成に力を入れた。

  「お六櫛」は、村を代表する伝統産業だが、後継者がいなかった。

  そこで全国に向け後継者を募集したところ、石川県輪島市出身の20代の女子大生が来てくれることになった。「お六櫛」は、海外での人気も高い。若い女性が作っているというメッセージを、世界に発信していく効果は大きい。

  木工も当村の地場産業だが、村には画材を作る工房がある。そこでは、桶職人がヒノキを使いワインクーラーなど、現代の使い方に沿った製品を作っていた。販路支援の一環として、ふるさと納税のお礼の品にしたところ、多くの人のニーズにマッチし人気の品となった。

  中京や関西でブランド化されている「御嶽はくさい」の栽培農家や、木曽牛を育てる牧場の後継者にも目途をつけることができた。牧場には、お六櫛同様に県外(山口県)出身の20代の女性が入職してくれた。

  伝統産業を絶やさない努力は、村づくりの基本のように思う。

  それは多様な職があるという村づくりにつながり、働き始める若者の職の選択肢を広げることになるからだ。当然にI・Uターンを希望する若者への訴求力も大きい。

当たり前のことを愚直にやり続けるー「結婚支援」

  結婚支援については、個人的な問題であり深入りは難しいため、手掛ける自治体は多いが成果に乏しいのが現実だ。

  ところが、木祖村では、村内に暮らす3名に結婚支援推進員を委嘱し、結婚指南やキューピッド役になってもらっている。ここまでやっている自治体は聞いたことがない。唐澤村長の肝いり政策だ。

  その3名というのは、村内で美容室を経営する夫妻と、縁結神社の麓の蕎麦屋の経営者だ。美容室は若者を中心に人気があり、蕎麦屋には縁結神社に願かけに来た若者が多く立ち寄る。立ち寄る若者の「恋」の相談に乗ってもらうよう、唐澤村長から熱い依頼をしてあるのだという。

  また、近年の結婚の減少には、「出会いの場」がないという背景もある。

  そこで、村では若い女性を多く消防団に入ってもらい、消防団活動を通じての出会いの場づくりも行っている。

  さらに、祭りも出会いの場としてはうってつけだ。村には7月に藪原神社例大祭という、多くの村の若者が帰ってくる祭りがある。この祭りをきっかけに結婚する村の若者も多い。

  どの町村にも消防団や祭りはある。ここがやり方によっては、「出会いの場」となる。
結婚を増やしていくための貴重なヒントだ。

 

  人口減少は日本の構造問題であり、地方自治体にとっては死活問題となっている。
  解決策は、木祖村のように「まずは仕事を作って、若者を村に残す。そのためには結婚や子育て支援をしっかりやって・・・」と当たり前の施策を地道にやり続けることしかないだろう。

  松下幸之助は「経営に奇手奇策はない」と言ったと伝えられるが、人口問題も同様だ。


(資料)『わが町わが村を語る“木祖村”』長野経済研究所「経済月報2021年11月号」
 

 

 

  

 

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