「第3回いいづなりんごスイーツコンクール」審査結果発表会

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最終更新日: 2021年11月4日

1016日(土)に長野県飯綱町のいいづなコネクトEASTにて、「第3回いいづなりんごスイーツコンクール」の審査結果発表会を開催しました。

最終審査には、参加エントリーのあった59名のうち、書類審査を通過した以下の11名の作品が出品されました。

 

(五十音順・敬称略)
・赤羽春菜(パティスリー ニューモラス)
・浅井栄一(Patisserie ARTISAN)
・浅川けい(EN VEDETTE)
・井上雄一(株式会社シュクレイ)
・小澤佑介(株式会社五千尺  パティスリー5HORN)
・笠原鉄平(俺の株式会社 俺のフレンチ梅田)
・加藤芳枝(株式会社ノバレーゼ アマンダンブルー鎌倉)
・土脇元文(Tokyo EDITION Toranomon)
・手塚郁実(Atelier Sucre Epice)
・橋ヶ谷祐司(有限会社パティシエシマ)
・二井雄樹(お菓子工房 春色)

 

 新型コロナウィルス対策として、出品者には会場にお越し頂かず、作品は会場まで配送いただきました。審査結果発表会の様子は、リモートにて配信しました。

 
 ▲全作品が会場に無事到着しました   ▲発表会の様子はリモート配信しました

 

第1回、第2回と東京で開催された本コンクールの会場について、「日本一のりんごの町」を目指す飯綱町において、町民が全国のプロのパティシエの作品に触れる機会を創出し、新たなりんごの魅力や価値・可能性を感じて貰うとともに、町内のりんご生産者およびその関係者のモチベーションの向上を図ることを目的とし、飯綱町内での開催としました。

上記の趣旨を踏まえ、4名のプロ審査員(大森由紀子氏(フランス菓子・料理研究家)、横田秀夫氏(「菓子工房オークウッド」オーナーシェフ)、フレデリックマドレーヌ氏(「パティスリー ル・ポミエ」オーナーシェフ)、堀江新氏(「パティスリー ラヴィドゥース」オーナーシェフ))が、味、見た目、オリジナリティなどを基準に選定する、「最優秀賞」、「最優秀賞(2位)」、「最優秀賞(3位)」、「特別賞」に加え、飯綱町民が選ぶ「町民賞」を今回初めて設定しました。
町民審査にあたっては、事前にお申し込みのあった12名を「町民審査員」として任命し、審査にあたって頂きました。


▲プロ審査員による審査の様子

審査結果発表

 リモートで審査結果発表会会場と受賞者をつなぎ、審査員および峯村勝盛飯綱町長から各受賞者に対し、賞状を読み上げていただきました。
また、受賞者それぞれからコメントを頂きました。
 

最優秀賞 

 受賞者 手塚 郁実 氏(Atelier Sucre Epice)
作品名 RECOLTE~秋の恵み~

【受賞者コメント】
今回は3回目の挑戦。今までは、書類審査も通過出来ず、どうしようかと思っていたが、今回は素晴らしい賞を頂けて本当に嬉しい。

優秀賞(2位)

受賞者 浅井 栄一 氏(Patisserie Artisan)
作品名 Brindille

【受賞者コメント】
りんご農家さんが大切に育てたりんごを皮も芯もまるごと全部使いたいという思いで作品を作った。大変光栄な賞を頂いて、本当に嬉しい。

優秀賞(3位)

受賞者 井上 雄一 氏(株式会社シュクレイ)
作品名 アプフェルバウムクーヘン

【受賞者コメント】
りんごをどのように表現しようか色々考えてこの形になったが、それを評価して頂きとても嬉しい。フレッシュなりんごは甘みと酸味が徐々にたまってきてしまうので、そのバランスを整えるのがとても難しかったが、自分でも満足する味に整えられたと思うのでそれを評価して頂いてとても嬉しい。

特別賞

受賞者 加藤 芳枝 氏(株式会社ノバレーゼ アマンダンブルー鎌倉)
作品名 錦秋(きんしゅう)

【受賞者コメント】
今回2回目の参加だったが、飯綱町のりんごの種類の豊富さや味の違いなど、勉強になることがたくさんあった。このような状況が落ち着いたら、飯綱町に行ってみたいと思う。 

町民賞

受賞者 手塚 郁実 氏(Atelier Sucre Epice)
作品名 RECOLTE~秋の恵み~

町民審査員が選ぶ「町民賞」は、プロの審査員による「最優秀賞」と同じく、Atelier Sucre Epiceの手塚郁実氏の作品「RECOLTE~秋の恵み~」となりました。(12名の町民審査員のうち、9名からの投票がありました。)

 

町民受賞作品についての町民審査員からのコメント

  • りんごが2つの使い方で触感の違いを楽しめて、中に入っているさつまいもも多く思わせるタルトの生地はおいしく、安定感がありとてもバランスよく配合されていると感じた。上にのっているくるみもとてもよい触感で好きだった。重たすぎず、広く食べられるお菓子。またぜひ食べたい。
  • 味はりんご、さつまいも、メープルシュガーそれぞれの触感が口の中で合わさって、秋の味覚をとても感じられるものになっていた。りんごの割合が非常に多く、りんごの美味しさと酸味があり、とても美味しく感じた。見た目の華やかさもあり、コンセプトである秋の収穫祭というイメージがそのままに感じられた。収穫できる喜びが視覚的にも見られて、とてもおもしろい作品だった。
  • 細く切ったりんごがぎっしりで、りんごが主役になっていると感じた。さつまいもをさりげなく使っていて、楽しい作品だった。他の濃厚な味の作品やチーズを使った作品と比べて迷ったが、印象深かったのでこの作品を選んだ。

 
▲審査員、飯綱町長より賞状が読み上げられました

審査員による講評・座談会

横田審査員長よる講評

いいづなりんごスイーツコンクールは、今回で3回目になるが、レベルがどんどん上がってきている。りんごに合わせて色々なお菓子を作る中、りんごに集中して、りんごの美味しさはどこにあるか、りんごの種類によって何が違うのかなど、色々な試行錯誤をしたと思う。新たにりんごの美味しさを見つけて、新しいスイーツが出来上がり、それが消費者のもとに届く。これは生産者の努力とパティシエの頑張りが結びついて良い形になるということだとつくづく思う。これからは、パティシエの人達も生産者の人達ともっとつながってみんなで盛り上がっていくと良いのではないか。入賞した人は本当におめでとうございます。そうでない人も、本当に美味しいスイーツばかりだった。そして、書類審査を通過しなかった人も、あきらめずにまた来年コンクールがあったらぜひ挑戦してほしいと思う。皆さん本当にお疲れさまでした。

 

座談会

  • 飯綱町での初開催について

【大森氏】
長野駅から車でりんごの木を見ながらここまで来て、りんごが沢山たわわに実っていたので、コンクールが始まる前から気持ちが高ぶった。作品も、今年は書類の段階から非常にレベルが上がっており、そのままパティスリーに出せそうな作品ばかりだった。ただコンクールということもあって、レストラン向けなどカテゴリーが色々あり審査が複雑ではあったがおもしろかった。一様に言えることは、みなさんがりんごを把握しているということ。東京で見つけられるりんごは種類が少ない。飯綱町のりんごをアピールしながら作ってくれた皆さんもすごく研究してくれて、りんごの良さを最大限引き出した作品が沢山あった。りんごの良さを審査員も気付かされるといった一面もあった。非常にレベルが高くて楽しかった。

【堀江氏】
前回までは東京開催であったが今回は飯綱町での開催ということで、参加者が減るのではないかという心配もあったが、実際は参加者も非常に多かった。書類審査の段階で、選ぶのがかなり難しかった。コンクールに対する参加者の気持ちも強いし、作品のレベルも上がっているのと感じた。りんごはたくさんの種類があり、味もたくさんあるが、それをうまく使いこなしている作品も多くなってきていた。洋菓子業界の中でも、りんごを使うという意味で、レベルがどんどん上がっていくと思う。働き方改革というところでは、りんごはアップルパイを作って並べてしまうことが多いが、フレッシュで作ったりんごのお菓子は一番おいしいと審査をして新たに感じられた。

【マドレーヌ氏】
本当にプロフェッショナルな作品ばかりだった。飯綱町のりんごはバラエティに富んでいるし、ぜひそれを活用してほしい。今回賞を受賞した方も受賞しなかった方も、ぜひあきらめないでトライしてほしいと思う。

  • 印象に残ったポイント

【横田氏】
りんごに加熱処理をして美味しさを引き出そうとした時に、りんごの種類によって加熱後の変化の仕方が違っていた。そういう意味では、今回コンクールを開催した時期が、りんごを良い状態で使える時期だったので、色々なことができたと思う。実際に作品を出品したときに、いつもと違う状況になってしまった人もいるかもしれない。でもそれが現実の世界なので、そういう中で味を安定して提供するためには、技術と知識が必要だと思う。生産者さんが一生懸命作って頂いているりんごを、私たちが距離を縮めて絆を築いて、もっとりんごを大切に作って使ってもらいたいと思ってもらうことが重要なので、今回参加した人たちも試行錯誤をしたと思うが、その試行錯誤をこれからもやめないで、もっとこうすれば美味しくなるのだというものを発見してもらいたい。それによってりんごの生産者さん達も、自分の作っているりんごがそのままでも美味しいけれど、スイーツになるとこんなに美味しくなるのだという風になっていけばよいと思うので、パティシエの皆さんはここで終わらずにずっと努力してさらに美味しいものを作ってもらいたい。

【大森氏】
特別賞を受賞した作品は和菓子だった。洋菓子の世界のコンクールに和菓子を出すというのは、珍しい。りんごの透明感があり、体にスーッと入ってきた。色彩が鮮やかで、日本人の審査員3名には共感するものがあった。マドレーヌ先生はフランス人なのでどのジャンルに入るのだろうか、ジュレなのかなという印象だったかと思うが、日本人の審査員には印象が良かった。また、ぜひ色々なチャレンジをして頂きたい。

  • コンクールで受賞するためのアドバイス

【堀江氏】
審査要項の中にオリジナリティというものがあり、とても重要なポイントだと思う。ただし、基本があってこそのオリジナリティなので、初めからすごく奇をてらったようなものを加えてしまったり、複雑な構成にしてしまったりすると、味覚の審査では評価されにくい。基礎・基本に、何か自分のエッセンスを加えていって、審査員の心に響けば自ずと賞がついてくるのではないか。りんごのお菓子というのはある程度基本のお菓子があるので、そこから自分のエッセンスを加えていくような形を目指していくのがよいのではないかと思う。

【マドレーヌ氏】
りんごのコンクールなので、りんごの味をとにかく出して欲しい。その味というのは、酸味。りんごというのは素材自体がクラシックで昔からあるものなので、その感覚から出ないほうがよい。私のお店の名前は「ポミエ」といって、りんごの木という意味。私自身もりんごの名産地出身。りんごやフルーツのお菓子は色々あるが、フルーツ自体の味をセレクトして出したお菓子を期待している。賞に選ばれなくても、それでやめるのではなく、何度でもチャレンジして頑張ることが大切。

【横田氏】
クラシックの伝統あるフランスのりんごのスイーツは、長い歴史の中ですごく試行錯誤して完成されてそれが続いている。これは、そこに美味しさが必ず潜んでいるからだと思う。初めてこのコンクールに出る人もいれば、何回も出てたくさん作っている人もいると思うが、一度はクラシックなりんごのスイーツを完璧な状態で作ってみるというのも一つの方法だと思う。そうするとりんごの美味しさがこんなところにあるのだなとつかめる。りんごを美味しく処理するというのが動線にあって、そこに新しいオリジナリティを加えていくという方法のほうが完成しやすい。コンクールだとみんな奇をてらって、絶対人がやらないことをやろうとすると、本来のりんごの美味しさが横に置かれてしまう部分があると思う。そういう意味では、一度クラシックのお菓子を作りあげて、りんごの良さを知るところからスタートするとよい。

【大森氏】
美味しいのは当たり前で、「サステナブル」のようなプラスアルファのテーマがあってもよい。味はよくなければいけないが、そこにプラスアルファがある未来のあるコンクールにしたいと思う。それから実際に厨房で作れるかを前提にして作品を出してほしい。手が込み過ぎていてもよくない。

  
         ▲横田審査員長による講評と審査員による座談会