長野県内最小平谷村 西川村長の挑戦 <2021・09・16>
長野県内最小の村「平谷村」の魅力
6月の新緑が眩しい日に、平谷村の西川清海村長をたずねた。
人口わずか400人の平谷村は、長野県にある58の町村の中で最小だ。
県の最南端で愛知県、岐阜県の県境に位置し、153号線と418号線の2本の国道が走っている。
また、村の標高は約1,000メートルと高原の気候を持つ。
2つの国道が人を運んでくれることと、高原の気候を生かし、スキー、ゴルフ、パラグライダーなどの観光業を主要産業としている。
愛知県、岐阜県のみならず静岡県からも平谷村のファンが足を運んでいる。
標高が高い地で育つ野菜はうまい
平谷村では美味しい野菜も多く収穫できる。
標高が高いことで、成熟するまでの期間は長くなる。
そのため糖度が高く柔らかい野菜ができる。トウモロコシ、ダイコン、キャベツ、ナス、キュウリなどさまざまな野菜を栽培しているが、どれも甘くて柔らかい。
東京でキャベツを1玉1000円で売ってみたところ、飛ぶように売れた。平谷村の野菜は、都会の人の肥えた舌も満足させるようだ。
経営危機に陥っている三セク観光施設
こうした恵まれた地域資源のもと、観光産業が外貨を稼いできた。
観光産業の主な担い手は、平谷高原赤坂スキー場や信州平谷温泉ひまわりの湯などの施設であり、第三セクター方式で経営が行われてきた。
ところがスキー人気の凋落やレジャーの多様化の流れもあり、近年、観光客の数は漸減してきており、この三セクの経営は厳しい状況にある。
観光を主要産業とする平谷村にとって、三セク経営が振るわないことは村の存続にも関わる一大事だ。
なんとなれば、ひまわりの湯では40人、スキー場では30人の村民が勤めるなど、村の主要な雇用の受け皿となっているからだ。
三セク立て直しのため村長に立候補
こうした危機に身を挺しトップに立ったのが、西川清海村長である。
西川村長は三セクの立て直しを公約に一期限りの覚悟で、県内新人村長の中で最年長ながらも立候補をし、当選を果たした。
西川村長の立て直しの方法は、リストラなどとは真逆の「働く人を大切にすること」による。
「人件費を削るという方法もありますが、意欲を持った魅力的な人間を育てる方が経営改善のためには必要な方策ではないでしょうか。働く人たちが自分の会社に愛着や希望を持てれば、おのずと道は開けます。そのため、私は就任1週間で全職員と面接をし、それぞれの考えを聞き、私の思いも伝えました。」
「今ある施設にどんな付加価値が付けられるか、それを役場が考えるのではなく、そこに勤める人たちに考えてもらうことが大切なのです。そのため、給与を自分たちで決められる権限を与え、利益が上がれば収入につながるように仕組みを変えました。職員の主体性ややる気が組織改革の基本です。」
今では、職員同士のコミュニケーションも徐々に活発化し、改革に向けた真剣な議論も目立つようになってきている。このように職員の意識改革という基盤を作りながら、会計の専門家や経営コンサルタントの力も借りて、経営改革を進めている。
組織の立て直しには、そこで働く人のモチベーションアップなくしてはあり得ない。
そして、それは働く人が「村長や組織に大切にされている」という思いなくしては生まれてくるものではない。
西川村長の思いや施策は、実に理に叶ったものではないでろうか。
三セクの再建を確信しながら、長野県最小の村を後にした。
(資料)長野経済研究所「経済月報9月号」「わが町わが村を語る 平谷村」
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