国内・県内にも影響が及ぶ「ウッドショック」<2021.6.28>

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最終更新日: 2021年6月28日

コロナの影響によるウッドショック

 新型コロナウイルス感染症の拡大は世界中の経済や産業にさまざまな影響を与えていますが、その1つに「ウッドショック」と呼ばれる現象があり、最近耳にする機会が増えています。
 今回は、このウッドショックの背景や国内・県内産業への影響について採り上げます。

ウッドショックの背景

 ウッドショックとは、昨年から始まった世界的な木材の品不足や価格高騰のことです。
 背景には、まず米国における木材需要の変動があります。2020年の春頃、米国では景気低迷による木材需要の減少やコロナの感染拡大によるロックダウンにより、木材メーカーが減産を行っていました。ところがその後、リモートワークの拡大や感染症対策などの面に加え、住宅ローン金利の低下もあって、郊外に戸建て住宅を建てて都市部から移り住む動きが強まり、住宅用木材の需要が急回復しました。減産を行っていた木材メーカーはこれに即座に対応できず、木材不足が発生し、米国産の製材の中には価格がコロナ前の水準に比べて21年の春には約3倍に高騰したものもありました。
 米国以外でも、例えばコロナが収束し経済回復が進む中国でも木材需要が高まっています。また、世界的な“巣ごもり需要”などの影響で海上輸送に使用されるコンテナが世界各地で不足し、運送コストも高騰した状態が続いています。これらの状況を受け、国内では、特に北米や欧州などからの輸入木材の価格上昇、及び輸入量減少による木材不足の影響が広がっています。

国内・県内でもさまざまな影響がみられる

 日本国内の木材自給率は全体で約4割弱ですので、相当な量を輸入に頼っています。そうした中で、輸入木材の調達が困難になっていることに伴い、国産材の需要が高まっています。
 林業や製材業が盛んな長野県内では、各地の森林組合や製材工場などで実際に稼働率が高まっているようです。県内産業の活性化につながる好機ともいえますが、一方で急な需要増加に対応する人材や設備が不足しており、十分な供給を行えていないのが実情のようです。
 そして、こうした木材の不足や価格上昇を受け、今後最も影響が懸念されるのが住宅の動向です。国内の大手ハウスメーカーでは、調達先の拡充による早めの木材確保や、大量調達によるコスト増の吸収といった対策を進めていますが、それでも中には既に木造住宅の値上げに踏み切っているメーカーもあるようです。値上げ幅は、おおよそ建築費用の1%程度、金額にして数十万円ほどと見込まれていますが、今後の状況次第では、それ以上の値上げも懸念されます。
 さらに、木造住宅の取り扱いが多い地場の中小工務店は、より深刻な影響が心配されます。木材調達のルートや規模の面で柔軟な対応が難しく、品不足が続けば施工の遅れにもつながります。
 いずれにしても、これから住宅を購入しようと考えている方々が、住宅価格の上昇や施工の遅れなどに直面し、建築計画そのものを見直したり、建築規模を縮小したりといった、住宅産業にとってマイナスの動きを取る可能性も考えられます。

いつまでウッドショックが続くかは不透明、今後も状況の推移を注視

 県内における新設住宅着工数のここ2年程度の月別推移をみると、消費税率の10%への引き上げやコロナの感染拡大などの影響による需要減少が続いたものの、最近では少しずつ状況が改善し、前年比で増加傾向がみられ始めていました。しかし、そうした中でのウッドショック襲来という事で、着工数が再び低迷することが懸念されます。
 今のところ、米国における木材価格の上昇は落ち着きつつあるようですが、輸入木材の価格はしばらく高値で推移し、ウッドショックがいつまで続くかは不透明です。我々にとっても木材は身近な存在ですので、今後も状況の推移を注意深くみていく必要がありそうです。

 

2021年6月28日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より

 

 

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