高まる県内産木材の利活用の重要性< 2021・6・21 >
高まるカーボンニュートラルへの取り組み
今年4月に菅首相が、温室効果ガスの削減目標を大幅に引き上げることを発表して以降、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量の実質ゼロ)に対する取り組みがこれまで以上に注目を集めています。排出量の大半を占める二酸化炭素(CO2)の削減するための新技術や各企業の対応など新聞紙面で記事を目にしない日はありません。
菅首相の宣言によると、わが国は、2050年までにカーボンニュートラルを達成するため、2030年の温室効果ガスの削減目標を掲げ、2013年に比べ46%削減することを目指します。そして長野県も今月、「長野県ゼロカーボン戦略」を発表し、2050年度にカーボンニュートラルを達成するための具体的な取り組みを公表しています。目標達成に向けては、CO2の排出削減とともに再生可能エネルギー導入を増やす取り組みのほか、CO2の吸収源を確保し続けていくことを掲げています。
この吸収源については、その多くが森林によるものです。長野県の県土を保全し、水源をかん養する機能を持つ森林資源ですが、そのCO2吸収源としての役割も大きく、今後も適切に管理・維持していかなければ、2050年度の目標にも影響が生ずる可能性があります。
CO2吸収源としての森林を巡る問題
森林がCO2吸収源として認められるためには、一定のルールが設けられています。1990年時点で森林でなかった土地に新たに植林したり、90年以降に、再植林や間伐等の森林整備が行われている森林などが対象になります。
森林は、若い木ほどCO2の吸収量が高く、高齢木になるほど低下すると言われています。伐採し、利用して、植える、育てるという「森林資源の循環利用」を進め、森林全体の若返りを図ることがCO2の吸収量を高めることになります。
こうした視点からCO2の吸収源としての県内の森林環境をみると、森林の高齢化という課題があります。長野県の森林の多くは、戦後に植えられたもので、現在は樹齢50年を超える高齢級の割合が高くなっています。高齢化した森林が利用されずに今後も増え続けると、CO2の吸収源としての役割にも影響が生ずる可能性があります。
県内の森林は近年、里山の間伐を進めてきましたが、木材としての利用は十分でなく「森林資源の循環利用」が滞った状態と言えます。今後、いかに県産財の利用を進められるかが問われていると言えましょう。
県内産木材の新たな利活用の促進を
こうした中、林野庁では木材需要を喚起するため、2019年からウッドチェンジというスローガンのもと住宅のみならず、民間事業所用の建築物、家具、日用品などさまざまなものを木に変えていくことを目的に「ウッド・チェンジ・ネットワーク」という組織を立ち上げました。これまで林業や木材業界と関係のなかった企業も店舗をはじめとした木材の新たな活用事例を模索しています。
さらなる森林資源の活用を考えていくため、県内でも林業関係者のみならず、利用する産業や消費者から新たな活用方法やアイディアを気軽に出し合えるような場を数多く作り、利活用を増やしていく努力が必要です。
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