二極化が進む県内企業の景況感< 2021・2・19 >
全産業の景況感は2期連続で改善
当研究所では四半期ごとに長野県内企業の景況感を調査するため、県内企業653社を対象に「四半期別業況アンケート調査」を実施しています。今回は1月に公表した10~12月期調査の結果についてご紹介します。この調査は、各企業経営者に自社の業況をどのように感じているかを「良い」、「悪い」、「どちらでもない」で回答してもらい、業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業割合-「悪い」と答えた企業割合、%ポイント)という形で景況感を示しています。
今回の結果は、全産業のDIが△26.5となり、前期の△54.8から28.3ポイント上昇し、2期連続で改善しました。業種別では、製造業が△25.6と前期の実績に比べ37.7ポイント、非製造業も△27.1の同20.1ポイントと共に大幅に改善しました。このほか、自社が保有する設備の過不足状況についても尋ねています。今期は、前期まで過剰感が高止まりしていた製造業の設備水準DIが大きく低下しました。今後の設備投資を占う上で明るさも見え始めています。
見通しの景況感は、製造業と非製造業で二極化
21年1~3月期の景況感は、全産業が△37.0と今期に比べ10.5ポイント悪化する見通しです。このうち製造業は 同+3.8ポイントの△21.8と改善が続く一方、非製造業は△49.2と同22.1ポイントの悪化を見込んでいます。
製造業は、中国向けを中心としたIT関連投資需要の増加から、景況感は引き続き改善する見通しです。一方、非製造業は、新型コロナの感染再拡大に伴う10都府県での再度の緊急事態宣言や県下の警戒レベルの引き上げなどの影響により、飲食や宿泊など観光関連需要の減少が予想され、再び景況感は悪化する見通しです。こうした動きを受け今後は、製造業と非製造業は二極化の動きが強まることが予想されます。
製造業の景況感は、大企業が先行
改善見通しの製造業の中でも格差が広がる動きが予想されます。製造業の景況感を大企業と中小企業の規模別でみてみると、大企業のDIは10~12月期の△20.5から△4.6へ大幅に改善する一方、中小企業は同△27.7から△28.6へとやや悪化する見通しです。
こうした格差の背景となっているのが、収益の見通しです。規模別の売上高と経常利益の見通しについてみると、大企業の売上高は前年並みとなるほか、経常利益は前年水準を上回る見通しです。一方で中小企業は、売上高、経常利益ともに前年水準を1割ほど下回るほか、10~12月期に比べ減少幅がむしろ拡大する見通しとなっており、大企業が先行して改善する見込みです。
製造業の設備投資の行方もポイントに
今後、大企業製造業の収益の改善が中小企業にも広がれば、設備投資の増加につながることが期待されます。現状では、製造業の設備水準DIは、大企業、中小企業ともに過剰感がみられます。今後、製造業全体で収益が改善し過剰感が薄らげば、設備投資も増加することでしょう。設備投資の動向も今後の景気の回復力を占う上でのポイントになりそうです。
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