「関係人口」の増加が移住につながる<2021.2.15>
新型コロナの影響で地方移住の動きが加速
新型コロナウイルスの感染拡大やリモートワークの普及などに伴い、大都市圏から地方へ移住する動きが加速しています。
2021年1月に公表された長野県の「毎月人口異動調査」によると、20年1年間の県内の転入者と転出者の差は1,748人の転出超過となりました。しかし、同年4月以降でみると、3,112人の転入超過となっています。月別でも4月以降は6月を除き転入超過が続いています。さらに、東京・名古屋・大阪の三大都市圏との人口異動も同様で、4月~12月の合計は、いずれの都市圏からも転入超過となりました。
長野県は以前から移住人気の高い県ですが、従来は例えばリタイアしたシニア層の方や、若い方だと転職や脱サラを伴って移住される方が多かったと思います。しかし、新型コロナの影響が長期化する中でテレワーク環境の整備等が進み、大都市圏の企業に勤務する方が仕事を維持したまま県内に移住するという例も増えているようです。このように、仕事の面で移住に対するハードルが緩和されたことも、長野県への転入が増えている要因として考えられます。
「関係人口」の増加が地方移住のカギを握る
とはいえ、県内各地で進む少子高齢化による人口減少は止まった訳ではありません。そうした中、近年、地域の担い手として「関係人口」と呼ばれる人材が注目されており、さらに、地域における関係人口の数と、大都市から地方への移住との関連性が最近の調査で明らかになりました。
まず、関係人口についてご説明します。地域を訪れる人のうち、移住した人は「定住人口」と呼ばれ、また、観光等で一時的に来た人は「交流人口」と呼ばれます。関係人口とは、定住人口でも交流人口でもない、地域と多様に関わる人たちを指す言葉です。具体的には、その地域に地縁・血縁がある、または過去に仕事やボランティア、学生時代の活動などにより、その地域に勤務・居住・滞在したことがあるといった方々が、地域外に住みながら、継続的にその地域や地域の人たちと関りを持ち、現地を訪れたり、地域の活動などに関与したりしている状態をいいます。
次に、関係人口と移住の関連についてですが、昨年、国土交通省が三大都市圏と地方在住者それぞれを対象にウェブ調査を実施し、その回答と国勢調査のデータを基にした、地方における人口1万人当たりの関係人口の数と、三大都市圏からの転入超過を記録した年の数との関係が公表されました。
その結果、1万人当たりの関係人口が多い自治体ほど、三大都市圏からの転入超過を記録した年の数も多くなるという傾向が確認されました。関係人口が多い地域は、地域の外からやって来る人を受け入れる環境が整っており、結果的に移住に結びつきやすいといえそうです。
ちなみにこの調査で、2012年から18年の7年間で年間の転入超過が7回、つまり毎年転入超過となった市町村が全国で11あり、そのうちの3つが長野県内の自治体でした。その3つとは、軽井沢町、白馬村、原村で、特に軽井沢と白馬は関係人口の数も人口1万人当たり10人以上と、今回の調査結果の中で、関係人口の割合が最も多い地域に分類されています。
地域と人との縁を大切にして移住につなげる
最近では、軽井沢や白馬は、リゾート地で休暇を兼ねながら仕事をする「ワーケーション」の誘致にも積極的です。こうした取り組みも、関係人口の創出につながるといえます。また、コロナ禍で大都市と地方との移動が難しい現在の状況では、オンラインによる関係作りも重要です。このほか、関係人口についての情報や各地の関係人口を増やすための取り組みなどは総務省のホームページでも紹介されています。
地方の自治体が移住を誘致するのは簡単ではありませんが、まずは、さまざまな縁によって生まれる地域と人との関係性を大切にし、持続的な地域の発展につなげていきたいですね。
(参考)長野県「毎月人口異動調査」
https://www.pref.nagano.lg.jp/tokei/tyousa/jinkou.html
国土交通省「ライフスタイルの多様化と関係人口に関する懇談会」
https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000110.html
総務省「関係人口ポータルサイト」
https://www.soumu.go.jp/kankeijinkou/
2021年2月12日放送 SBCラジオ「Jのコラム」より
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