テレワークがカギを握る脱東京の流れ<2020.12.17>

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最終更新日: 2020年12月17日

 

新語・流行語にもノミネートされた「テレワーク」

   12月1日、毎年恒例の「ユーキャン新語・流行語大賞」が発表され、年間大賞には新型コロナウイルス関連ワードの「3密」が選ばれました。また、事前に公表されていた計30のノミネート語の多くが新型コロナ関連の言葉で占められたことも話題となりました。
 そうした今年を象徴する言葉の中で、特にビジネスの分野で浸透したと感じる言葉の一つが、「テレワーク」ではないでしょうか。テレワークはコロナの感染拡大を防ぐ観点から、都市部を中心に在宅勤務などが急速に広がり、長野県内でも多くの企業で導入が進みました。
 今回は、11月12日に開催された「企業等の東京一極集中に関する懇談会」で公表された、国土交通省が東京都内に本社を置く上場企業に対して行ったテレワークや本社移転等に関するアンケート調査の結果についてご紹介したいと思います。

テレワークの進展で都心からの本社移転を検討する企業も

 調査は今年の8月から9月にかけて行われ、389社から回答を得ています。まず、8月末時点でテレワークを実施している企業割合は全体の81%でした。そして、そのうちの71%は、今後もテレワークの利用を維持・拡大していくと答えています。つまり、コロナの感染拡大が収束しても、テレワーク制度を続ける企業が半分以上あるということです。
 テレワーク導入のメリットとしては、「従業員のワーク・ライフ・バランスが改善する」が79%と最も多く、「業務の効率化・無駄な仕事の削減につながる」が64%と続いています。さらに、「オフィススペースが削減できる」が51%と半数に達し、オフィス賃料の削減や東京都心の過密状態の解消にもつながりそうです。
 では、本社事業所の移転および縮小については、どう考えているのでしょうか。具体的に検討している企業が26%となっており、かつその約半数は今年になって検討を開始しています。やはり、コロナの拡大やテレワークの普及が都心からの本社の移転検討の契機になっているようです。
 移転先となり得る場所については、「東京23区」が73%と最も多く、次いで、「埼玉県・千葉県・神奈川県のいずれか」が21%となり、いわゆる地方は非常に少ない状況です。要は、都心からは移転したいがなるべく都心に近い場所にとどまりたいのが実情といえます。
 ただ、移転先場所に求める条件では、「オフィス面積の確保」や「賃料の安さ」が上位となっており、これらの環境が整う地方にも優位な点はありそうです。また、移転課題には、「移転先での人材採用」や「移転費用」を挙げる企業が多く、こうした点を地方の自治体や支援機関が積極的にサポートしていくことが、企業の地方移転を促すポイントになりそうです。

東京一極集中を変えるカギを握るテレワーク

 今回は企業アンケートと同時に首都圏在住の個人を対象とした調査も行われ、「ほぼ完全にテレワークでの勤務が可能になった場合、引っ越しを検討したい」とする回答が約4割に上りました。さらに、その3割程度は関東以外の地方を含めて引っ越しを検討したい意向のようです。
 コロナ禍における「脱東京」の流れは既に一部で始まっていますが、この動きが継続し、これまで長年続いてきた東京一極集中を変える歴史的転換点に果たしてなるのでしょうか。そのカギを握るのが、まさにテレワークと言えそうです。

  (参考)国土交通省「企業等の東京一極集中に関する懇談会」 

        https://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/kokudoseisaku_tk3_000107.html

 

2020年11月23日放送 SBCラジオ「Jのコラム」、2020年12月16日付 南信州新聞「八十二経済指標」より

 

 

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