サラリーマン学 ~男の居場所探し~<2020.10.09>

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最終更新日: 2020年10月9日

65歳を超えると半分は会社にサヨナラ

   人生100年時代、とはいえまだまだ70歳や80歳まで働いている人は少ない。

 総務省の「労働力調査」で2019年平均を見ると、65歳以上の就業率(働いている人の割合)は24.9%となっている。

 年代別では、65-69歳では48.4%と60代はまだまだ半数は頑張ってはいるが、70-74歳では32.2%と3分の1に減り、75歳以上になると10.3%とかなり少なくなる。

 私の知人でも、多くが60歳や65歳には定年を迎え悠々自適を夢見るのだが、現実はそうそう甘くはないようだ。

家に俺の居場所がない!

 定年退職をして半年ぐらいは、やりたかったゴルフ三昧、映画三昧、旅行三昧など趣味だけでも楽しいようだ。

 しかし、それらが一巡した後は、家に居る時間がどうしても多くなる。

 そこで出てくる嘆き節が「家に居場所がない」というものだ。

 先日も退職をした先輩から、家の近所に事務所を借りたから遊びに来ないかという誘いを受けた。

 奥さんと家にいる間、居間に寝転んで新聞を読んでいる雰囲気がいたたまれなくなるようなのだ。

 確かに考えてみると、奥さんが忙しく家事をする同じ空間で、のんびりと新聞を読むというのは居づらいに決まっている。

 仕方なく、先輩は借りた事務所に行っては、新聞を隅から隅まで読む毎日のようである。

 なんらかの役を持たなくては  

 こう考えると、居場所と言うものは、人が落ち着いて生きていくために必要な場所だ。

 学校や勤め先、住まう地域などの「場」で、ただ居るということではなく、なんらかの役を担って「ほっとひと安心」とするというのが居場所ということになるだろう。

 実は私も数年後にはそんな時期を迎えるため、他人事ではない。家にいても寝転んでいるイメージしか湧いてこないのだ。

 どうしたものかと思案に暮れている中、県外から私の生まれ故郷佐久穂町に移住し農業に従事している方の話を聞く機会があった。

 見ず知らずの片田舎に入り込んで、その人は見事に地域に溶け込んでいる。そればかりか、地域の農家に有機農業などを教えてもいる。

 「どうしてそんなことが出来たのか」と聞くと、「移住当初、地域の役を全て引き受けてきた」のだという。

 地域での役と言えば、皆出来ればやりたくないものの筆頭に上がる。私も自慢ではないが、全てを妻任せである。

 その皆が嫌がるものをあえて引き受けるということが、その地域に居場所を作るポイントだということを教えていただいた。

 居場所は一兵卒となって自らが・・・

 話を家庭に戻そう。今まで家を空けていたお父さんが家に溶け込むためには、最も嫌なことを進んでやればいいと言うことになる。

 まずはゴミ捨てや風呂掃除。そして、便所やカビの生えている排水口掃除などだ。当然に料理や地域の役も奥さん任せではいけない。

 つまり、先輩も寝転がっている場合ではなかったのだ。

 同様に会社で居場所がないと感じるようなことがあったら、その会社で誰もが嫌がる事をやってみたらどうか。自分を振り返るに、実はろくに働かない上に、仕事を選り好みしているのかもしれない。

 楽な仕事や、上げ膳据え膳の定年後生活など望んでいたら、「居場所がない」も何もあったものではないだろう。

 行き詰まったら常に一兵卒になる覚悟が必要なのかもしれない。


(初出)読売新聞朝刊「しなの草子」(2020年10月9日)を加筆修正

 

 

 

 

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