将棋の藤井二冠に学ぶコロナ禍にすべきこと<2020.9.11>

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最終更新日: 2020年9月11日

 

新型コロナの影響で寂しい夏に

   今年の夏は例年と異なり、各地の夏祭りや花火大会などのイベントが中止されたことに加え故郷への帰省を自粛する方も多く、寂しい夏と言わざるを得ない状況でした。

   そうした中、私が今注目している明るい話題が、将棋の藤井総太二冠の活躍です。

記録ずくめの活躍の背景にコロナ禍の過ごし方が

 ご存じの通り、7月に8大タイトル戦の一つ、棋聖戦で現役最強とも言われる渡辺明棋聖に3勝1敗で勝利し、見事に史上最年少のタイトルホルダーとなりました。さらに、王位戦でも4戦4勝と木村一基王位を圧倒し、史上最年少での二冠達成、そして最年少での八段昇段と、まさに記録ずくめの活躍です。

  このように注目や期待を集める藤井さんですが、最近の快進撃の要因の一つとして取り上げられるのが、コロナ禍での過ごし方です。今年の4月から5月にかけて、緊急事態宣言下で長距離移動を伴う将棋の対局が延期され、藤井さんも自宅待機を余儀なくされました。その際にどう過ごしたかというと、高性能な将棋ソフトを活用して徹底的に自らの戦法を解析し、苦手の克服に努めるなど、自分の将棋を根本から見つめ直したことで一層実力を増したそうなのです。

  こうした藤井さんのコロナ禍の過ごし方は、私たち個人のみならず、会社経営などにおいても大いに参考になる考え方ではないでしょうか。 

現状の見直しによる課題の改善と、数年単位での経営の筋肉質化が必要 

    私ども長野経済研究所が7月、県内企業に対してコロナ禍での経営状況を聞いたアンケート調査によると、コロナ前と比べて売上高が大きく減少する中、経営全般の対応状況では、最も重要な当面の資金確保に次いで、生産・販売計画や経営戦略の見直しを行ったとの声が多く聞かれました。

   また、感染防止策として全体の約3~4割の企業では、社内外の面談のオンライン化や、テレワークを実施しており、これまでとは異なる仕事のやり方に取り組んでいる様子が伺えます。

   この結果を受けて、コロナ禍における企業経営についての大切な考え方を2つ挙げたいと思います。1つ目は、藤井さんが自分の将棋を根本から見つめ直した様に、自社の経営をきちんと見つめ直すことが重要ということです。多くの企業が実践している経営の見直しや働き方の改革ですが、そのほとんどは、急遽講じられた一時的な対応だったのではないでしょうか。例えば、テレワークは職場や通勤中の接触機会を減らすために導入されたと思いますが、本来は業務効率化や生産性向上のためのツールです。そこで、本来の目的を達成するために、現在の業務内容をしっかりと棚卸し、作業工程の課題を明確にした上で、テレワークによって改善が可能か検討し、コロナ禍を機会と捉え継続的な運用を探るべきではないでしょうか。

   2つ目は、現在のコロナ禍の対応は年単位で考える必要があるということです。藤井さんも恐らく10年先など長期を見据えた将棋を考えているものと思います。コロナについては現状、国内外でワクチンや治療薬の開発が進められていますが、これらが広く普及し、いわゆるポストコロナとして本格的な経済回復が期待されるまでには、数年を要するという見方もあります。そのため、会社は事業の継続に向けた経営の筋肉質化が必要です。こうした状況を機に、以前から対応が求められていた業務のIT化や自動化に思い切って取り組むほか、コロナ対策としての非接触などに関連する新たなビジネスチャンスの取り込みや事業の多角化などを検討することも重要だと思います。

 コロナの先にある飛躍を目指して 

  藤井さんは、自宅待機中、今自分にできる事やるべき事を考え、現状分析をした上で課題の改善に努め、結果を出しています。私たちもこの姿勢を参考に、コロナ禍を機に自らの仕事や経営を見つめ直し、新たな挑戦などによってその後の飛躍につなげていきたいですね。

 

(初出)SBCラジオ「Jのコラム」2020年8月14日放送より (※2020年9月11日に内容を修正して掲載)

 

 

 

 

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