新型コロナウイルスの影響で大きく悪化した個人消費<2020・7・22>

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最終更新日: 2020年7月22日

5月の実質消費支出は前年月比16.2%の大幅減

   5月25日に国内の緊急事態宣言が解除され、経済活動が本格的に動き出しました。こうした中、落ち込んだ経済を立て直す上で個人消費の回復に注目が集まります。
 個人消費の動きをみるための指標の1つとして、家計調査がありますが、7月7日に5月分のデータが公表されました。物価の変動を除いた実質消費支出は、前年月16.2%の減少となりました。前月4月の家計調査でも実質消費支出は11.1%の減少と、大幅な落ち込みとなっていましたが、これをさらに上回る落ち込み幅です。新型コロナウイルスの影響により、旅行や外食への支出が大幅に減少したことが主な要因であり、統計が比較できる2001年以降で最大の落ち込みです。 

巣ごもり消費で明暗も

 4、5月の消費支出について、支出品目別に詳しくみると、大きく減少した品目がある一方で増加した品目がみられます。前年月比でみてみましょう。まず、大きく減少した品目では、食料関連は外食費にあたる「食事代」が、4月が63.3%の減少、5月が55.8%減、「飲酒代」は4月が90.3%減、5月も88.4%と大幅な落ち込みとなりました。また、衣料品関連では「背広服」が4月79.9%減、5月64.7%減、「婦人スラックス」が4月61.5%減、5月37.4%減となりました。外出抑制による旅行関連では、「宿泊料」が4月94.7%減、5月97.6%減、「パック旅行費」は、4月97.1%減、5月95.4%減と大型連休中の大幅な減少がみてとれます。
 一方、大きく増加した品目では、食料品関連は「パスタ」が4月70.5%増、5月38.8%増となったほか、「即席麺」が4月43.3%増、5月31.0%増と家庭内で手軽に調理ができるものへのニーズが高くなっています。また、外食控えによる需要もみられ、「チューハイ・カクテル」が4月42.1%増、5月52.6%増となったほか、家具・家事用品で「電子レンジ」が、4月30.0%増、5月41.4%増となりました。このほか「ウェットティッシュ」が除菌関連需要などの増加で4月68.7%増、5月45.2%の増、マスクやガーゼが含まれる「保健用消耗品」でも4月123.9%増、5月179.5%増と高い需要となりました。
 家計調査では、県庁所在地別のデータも公表されており、参考までに長野市の状況を確認すると、食料品関連では「パスタ」や「即席麺」は4月までは全国様二桁の増加となりましたが、5月は減少に転じています。また全国では「チューハイ・カクテル」が増加していましたが、県内では4、5月は減少した一方、「ワイン」が4、5月で二桁の増加となっています。このほか、「宿泊料」や「パック旅行費」も大幅な減少となっています。 

厳しい状況が予想される県内消費

 今後の消費を占う上で重要となるのが、消費者のマインドです。当研究所が県内1,000世帯に実施した4月の消費動向調査によれば、消費者の半年先の消費マインドを示した消費者態度指数は大幅に落ち込んでいます。また、新型コロナの収束時期についても長期化を予想する世帯が多くなっています。
 このまま新型コロナの収束が長引けば、景気が更に悪化することから収入の悪化を招き、それが更に消費者のマインドを悪化させるという負のスパイラルに陥ることも懸念されます。
 こうした中、県では、社会経済活動の再開に向けたロードマップを示しています。7月10日からは県外需要拡大期と位置づけ、経済活動の活性化を支援していく予定です。これを機に県内の景気が持ち直し、負のスパイラル気運が払拭され、消費マインドが改善していくことが期待されます。

(初出:2020年7月15日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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