懸念される新型肺炎の県内経済への影響<2020・3・11>

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最終更新日: 2020年3月11日

全産業の業況判断DIは4期連続で悪化

   中国から発生した新型肺炎の感染は日本国内、さらには長野県内にも広がりつつあり、今後の県内経済への影響が懸念されます。そうした中、まず足もとまでの県内景気の状況について確認したいと思います。当研究所は、四半期ごとに長野県内の業界の景況感を調査するため、県内企業666社を対象に「四半期別業況アンケート調査」を実施しています。今回は1月に公表した10-12月期調査の結果についてご紹介します。
 この調査は、各企業経営者に自社の業況をどのように感じているかを「良い」、「悪い」、「どちらでもない」という形で答えてもらっています。県内企業の業況判断DI(業況が「良い」と答えた企業割合-「悪い」と答えた企業割合、%ポイント)は全産業が△31.0と4期連続で悪化しました。
 業種別にみると、製造業が△34.7と、前期比10.0ポイント低下し、2期ぶりの悪化となり、非製造業も△27.6と、同10.3 ポイント低下し、2期連続で悪化しました。製造業では、米中貿易摩擦に伴う中国経済の減速による投資の抑制から、工作機械を中心に受注減少が続いています。12 月中旬に米国の中国に対する追加関税が見送りとなりましたが、業況判断DI はさらに悪化しました。非製造業は、製造業を中心とした投資の抑制から民間の建築需要などが落ち込んだほか、消費税増税による支出抑制や台風19 号の影響などから、DI は大幅に悪化しました。
 1~3月期見通しは、全産業が△25.7 と今期に比べ5.3ポイントの上昇となっています。この上昇は特に製造業の期待感によるところが強く表れています。米中貿易摩擦の影響で引き続き海外向けを中心に需要は低迷する見通しですが、米中貿易交渉を巡る第一段階の合意により先行きの不透明感が薄らぐことへの期待が景況感を押し上げました。一方、非製造業では、消費増税の影響から消費は力強さを欠くことが予想されるほか、雪不足によるスキー客など観光面への影響が懸念され、横ばいの見通しです。 

懸念される新型肺炎の影響

 長野県内の景気は、消費税増税や台風19号の影響、暖冬による雪不足などから景況感は大きく落ち込みましたが、製造業では先行きの景況感への期待が膨らみつつありました。そうした中、今回の新型肺炎が発生しました。感染は世界中に広がり始めており、景気を大きく下押しすることが懸念されています。県内の製造業では、中国にある工場の稼働の遅れなどから部品や素材の調達が滞っている企業がみられます。工場を操業するためには、マスクの定期的な取り換えや従業員の健康チェックなど政府の指導のもと厳しい規制があるほか出勤できない従業員も多く、稼働が一部にとどまる状況です。このほか住宅関連資材などでも一部で供給が滞っており、今後、県内の台風被害にあった住宅の復興に支障が出る可能性もあります。
 こうした中、日本国内でも企業のイベントの自粛や消費を手控える動きも強まっています。また、観光面では外国人旅行者の宿泊予約のキャンセルに加え、国内でも旅行控えの影響が出始めています。今後、どの程度で感染が収束するのかという予測は難しい状況にありますが、まずは感染拡大の抑止、安心安全確保のための情報収集を進め、自らも基本的な予防を徹底し短期間で収束できるようにしていくことが必要です。
 

(初出:2020年3月5日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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