障がい者が輝ける社会へ<2020・01・11>

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最終更新日: 2020年1月11日

 

   地元の民放テレビ局が主催するCM大賞の審査員をやっている。この賞は、県内の市町村がふるさとの魅力をPRするために制作したCMコンクールである。

  昨年12月、その審査会が行われ、最優秀賞には小川村の作品「鹿島槍ヶ岳が見つめていた小川村」が選ばれた。障害を持つ音楽好きの2人を軸に、温かい村の情景を映した作品だ。

  主人公の1人29歳のなおちゃんは村の共同作業場で働き、ギターを弾くことを趣味としている。もう1人のキヨノリさんは68歳。おやき製造販売の「小川の庄」でおやき作りに関わり、大好きな歌で周りを賑わせている。2人の夢はステージに立つことだった。

  昨年の夏、村では「サマーファスティバル」が開催された。ステージ衣装に身を包んだなおちゃんとキヨノリさんがバンドを組み、同フェスティバルの舞台に立っていたのだ。観衆からは、惜しみない声援と拍手が送られた。「誰にでも居場所と活躍の場があり、夢を実現できるのが小川村」。そんなメッセージが強く伝わってくる作品だった。

  彼らの懸命な姿に、私は少々目頭が熱くなった。世の中には、何らかの障害を持っている方が大勢いる。しかし、誰1人として好きで障害を持った人はいない。健常者はたまたま健常者なだけのことなのだ。そう考えるなら、障害のある方を健常者が支えていく企業や社会こそが健全だということに気がつく。

  2030年までに世界から貧困や差別をなくすため、国連で採択された「SDGs(持続可能な開発目標)」という取り組みが日本でも本格化している。SDGsの根底にあるものは、あらゆる人の人権の尊重である。こうした気運が高まりつつある中、今回の最優秀賞の持つメッセージは、多くの人の心に届くものだと思う。


(初出:2020年1月11日 読売新聞長野版「しなの草紙」『障害者が輝ける社会へ』)

 

 

  

 

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(初出)『利便性の代償』「しなの草子」2019年8月17日読売新聞地域面朝刊

 

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