企業活動に他者の力<2019・11・16>

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最終更新日: 2019年11月16日

 

 先日足を捻ってしまい、痛くて歩けなくなってしまった。困り果てて杖を使ってみると、思いのほかうまく歩くことができた。たった一本の杖でも頼りになるものである。
   自分だけではできないが、他の力を借りるとうまくいくということは多い。仕事でも行き詰った際には、早めに周りの応援を頼むことが大切だ。周りの応援を得て、どんどんと仕事をこなす人は大体が「やり手」だろう。

   ところが、企業活動の場合、「困った」とは思っても、なかなか他の企業に声を掛ける行動には踏み切れていないようだ。

   当研究所が県内企業に行った「企業活動についてのアンケート調査」によると、今後力を入れて行きたい活動について「他社との連携」を挙げる企業は2割程度にすぎない。「どのように連携していいのか分からない」「自社の窮状をさらすようでみっともない」。このような理由が多く挙げられている。

   他者に頼らない企業活動は、自ら可能性を閉ざしている。先日お会いした塩尻市の木曽漆器メーカー「小坂丸嘉漆器店」は、県の協力を得て、ガラスに漆器を塗ることに成功した。さらに、デザイナーとも協業。漆で色付けしたとは思えない鮮やかなガラス食器を制作し、人気を博している。シルクロードを通って漆が高級品として伝わった歴史的経緯もあり、欧州でも評価されているという。

   こうなると若い学生が放ってはおかない。見学に訪れ、就職する人もいるようだ。私の知る限り、学生の方から見学に来る県内企業はそう多くはない。外部の力を使う事、恐るべしではないか。

   個人も企業も独りで悩むことはない。足を痛めたのなら杖に手を伸ばせばいいし、一社で困ったのなら、他社のドアを叩いてみるべきだろう。


(初出)2019年11月16日読売新聞地域面「しなの草子」『企業活動に他者の力』

 

 

  

 

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(初出)『利便性の代償』「しなの草子」2019年8月17日読売新聞地域面朝刊

 

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