増加する訪日外国人旅行客<2019・10・16>

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最終更新日: 2019年10月16日

訪日外国人旅行者数は堅調な動き

   2020年の東京五輪開催まで残り1年を切りました。急ピッチで工事を進めてきた開・閉会式が行われる新国立競技場もいよいよ12月にはオープニングイベントが行われる見込みで施設整備も終了に近づいています。施設の周辺にはこれに先立って、過去日本で開催された東京、札幌、長野の聖火台のレプリカも展示されるなど開催ムードを盛り上げています。今後、世界中からの観光客受け入れに向けた準備もこれまで以上に加速していくと思われます。
 日本政府観光局(JNTO)が公表している「訪日外客数」によれば、2018 年の訪日客数は、前年比8.7%増の3,119 万2 千人で、統計を取り始めた1964 年以降、最多となっています。地域別では、中国が838 万人と全地域で初めて800 万人台に達したほか、東南アジアでは、タイが113 万人と初めて100 万人を突破するなど、過去最高を記録した地域が多くなっています。
 足もとの19年8月は、訪日客数が多い韓国の減速により、全体では前年同月比2.2%の減少となりましたが、単月で100 万人を超えた中国のほか、欧米豪市場で前年同月比2 桁の伸びとなるなど、堅調さを維持しています。地域別でも、単月として過去最高を記録したスペインのほか、15か国(中国、台湾、タイ、シンガポールなど)で8月として過去最高を記録しています。
 また、消費額でも前年同期比13%増の1兆2810億円となり、2010年の統計開始以来、四半期として過去最高を記録しました。国籍・地域別では中国が約37%を占め、経済の減速が懸念される中でも、訪日消費への衰えはみられません。 

期待される「コト消費」を通じたさらなる消費の増加

 訪日客の動きは地方でも存在感が高まっています。観光庁の2019年「観光白書」によれば、15年に地方を訪れた訪日客数は1,020万人で、三大都市圏のみを訪れる外国人の950万人を僅かに上回っていました。それが18年には1,800万人にまで増え、三大都市圏の1,300万人に比べ500万人も上回っています。消費額でも18年は1兆362億円となり、15年に比べると58%増加するなど地方の魅力が広がっています。こうした背景には訪日外国人旅行者の関心が多様化し、体験を中心とした「コト消費」への関心が高まっていることが挙げられます。
 「コト消費」ができる「体験の場」の有無は地域への誘引力を左右します。都道府県別にみた具体的な体験では「スキー・スノーボード」が、長野県は新潟県に次いで2番目に魅力が高くなっています。さらに、「コト消費」は訪日外国人旅行者の1人当たり消費単価を増加させます。「スキー・スノーボード」は、体験の有無による消費単価の差が特に大きく、体験しなかった場合の消費単価である15 万1,699 円に比べ、体験した場合は22 万5,056 円と、7万3,356 円も高くなっています。また、観光白書では訪日客がスキー・スノーボードを行うことにより、18 年に国内で約650億円の経済効果をもたらしたという推計をしています。長野県にとって誘引力があるスキー・スノーボードのみならず、さまざまな「コト消費」の体験を用意することで、訪日外国人旅行者による経済効果をさらに高めることも期待できます。
 

(初出:2019年10月9日付 南信州新聞「八十二経済指標」)

 

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