「プラチナ世代が輝ける社会」が日本を救う<2019・09・30>

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最終更新日: 2019年9月30日

地域経営プラチナ研究所の起業 

   私の前任の調査部長だった平尾勇さんは、長野経済研究所に勤めたのちに松本市商工観光部長に着任された。松本市では、菅谷昭市長が表明した「健康寿命延伸都市」の実現がミッションの一つだった。「世界健康首都会議」や「松本ヘルス・ラボ事業」などを新たに立上げ、官民一体となった健康産業創出に取り組んできた。こうした経験を生かして、松本市を退職された現在、株式会社地域経営プラチナ研究所を設立され、地域経済や産業の振興、地方自治体のコンサルなどを手掛けている。
 ちなみにプラチナ社会というのは、元東大総長の小宮山宏氏が提唱する「エコで、高齢者が参加し、一生を通じて人が成長を続け、雇用がある社会」のことである。高齢者をシルバーと称することもあるが、高齢者が輝き、活躍することこそ重要との意味合いから「プラチナ」という概念を提唱された。小宮山氏は、プラチナ社会を実現するため、プラチナ構想ネットワークを組織しており、長野県始め、県内の主要自治体も会員となっている。平尾さんも松本市時代から共に事業を手掛けてきた関係から、特別会員となっている。
 65歳になってからの起業に痛く感銘し「シニア起業は凄いですね」と言うと、「シニア起業ではなく、ベンチャー起業と言って欲しいな」と笑われた。以下、ベンチャー起業家平尾社長のお話を紹介したい。

プラチナ世代が輝くための「地域プラットフォーム」

  「地域経営プラチナ研究所のミッションは、人生100年時代にプラチナ世代が輝くための『地域プラットフォーム』を作ること。これは日本経済や地域創生にも繋がる重要なことだ」と起業の目的を教えていただいた。
 国会で取り沙汰された年金2,000万円不足問題に象徴されるように、65歳以降のシニアは年金頼みで、ともすれば若い世代のお荷物だとも解されかねない。果たして65歳以上は現役世代のお荷物なのか。
 「これは現在の人口統計に問題がある」と平尾社長は指摘する。「人口統計では15歳~64歳を労働人口としているが、実際に15歳で働いている人は殆どおらず、逆に64歳で仕事を終えてしまう人も限定的だ。実態をみると、74歳までは7割ぐらいは健康体で自立した活動ができ、多くの人が体が動く限り働きたいと考えている。そこで労働人口を20歳~74歳として考えると、この層の日本の人口は米国、独国、仏国、英国よりも多くなる。この層が労働者として活躍することができれば、年金問題は緩和される。したがって、65~74歳の年代が生き生きと働き、暮らせることが非常に重要であり、それを可能とする場をいかにつくるのかが日本や地域社会に求められている」
 この生き生きと働ける場というのが、平尾さんの言う「地域プラットフォーム」だ。

働くことで、人の役に立ち、必要とされる幸せ 

  「65歳までの職業人生を終え、その後どのような分野で活躍すべきか。それ以降は生々しいビジネスとは一線を画した若手の良きアドバイザーになると同時に、社会貢献を主眼に置いた働きをすべきである。これは人間の欲求にも叶ったものだ。マズローの欲求5段階説では、第一が生理的で、安全、社会的、承認、自己実現と欲求は高度化するが、実はこの自己実現の上に『社会貢献』があると後年述べている。社会貢献こそがプラチナ世代のなすべき仕事だ」平尾社長の抱くプラチナ世代のミッションは極めて明快だ。
 そもそも幸せになるためには、働くことが必須である。障碍者雇用で有名なチョーク製造の日本理化学工業社長が禅寺のお坊さんから受けた教えに、次のような言葉がある。
 「人間の究極の幸せは、4つのことが満たされること。1つ目は愛されること、2つ目はほめられること、3つ目は人の役に立つこと、4つ目は人に必要とされること。この内、1つ目以外は働くことでしか得られない。福祉施設で大事に面倒をみてもらうことが幸せではなく、働いて役に立つ会社こそが人間を幸せにする。」年を取っても趣味三昧や家でのんびりすることばかりでなく、働き続けることが真の幸せを持続させる秘訣のようだ。

社会課題解決に向けた官民連携

  最後に健康産業における、行政と民間企業の連携の重要性について強調された。
 「これからの財政難の時代、全てを行政機関が行うには無理がある。課題解決に向けては民間の力を借りるべきであり、それがまた産業を創り出すことにも繋がる」
 平尾社長は松本市の部長時代、低い健康診断受診を上げるためにコンビニや金融機関との連携を考え、実施してきた。買物やお金を下すついでに健康診断ができるという気軽さが受け、受診率は上がり、民間事業者では来店客増加や売上増につながった。
 このような産業創造の実体験から、地域経済や産業振興、地方自治体のコンサルを主たる事業とする会社を立ち上げ、プラチナ世代の活躍の場を創造し地方創生を実現しようと東奔西走の日々を送られている。

 私自身も「地域経営プラチナ研究所」をプラチナ社会の星として仰ぎながら、人生100年時代の50代を、人生後半の土台作りの時期として体力、知力ともに鍛え直さねばと切に感じた。

 

  

 

 

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