リニア開通に向けた下伊那郡喬木村の取り組み<2019・08・09>

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最終更新日: 2019年8月9日

喬木村、市瀬直史村長を訪ねて 

  喬木村は1875(明治8)年に当時の阿島村、小川村など5か村が合併し発足して以来、一度の合併もなく今日まで144年の歴史を重ねている。
  現在は「イチゴ狩り」の観光地としても有名である。最近では、イチゴ農家を志し長崎県や新潟県など他県からの移住者も増えている。村ではこれらの移住者を応援しようと、畑、施設、住居を提供し、イチゴ栽培のノウハウなども伝授している。
  リニア新幹線開通まで8年ほどになったが、喬木村ではリニア新駅まで約5分といった恵まれた場所にある。品川から45分、名古屋から25分に位置する場所として、イチゴの魅力に加え、都会にはない豊な自然や人の縁「結(ゆい)」をしっかりと情報発信していきたいとしている。

ICT活用で過疎地の小学校を存続させる

  喬木村ではICTを使った教育でも進んだ取り組みをしている。これを活用して都会とそん色ない教育を提供できる村としての整備を急いでいる。
   ICTの取り組みの経緯は、小学校存続への対応からだった。同村には中心部に第一小学校と山間部に第二小学校という2つの小学校がある。人口減少で第二小学校は全校児童50名程度と、統廃合を考えなくてはいけない規模となっていた。市瀬村長は「もし統廃合で第二小学校がなくなってしまえば、その地域のコミュニティ維持が困難になってしまう。なんとかしなくては」と存続の道を探った。
   たどり着いたのがICTを活用した遠隔授業だった。文部科学省の「人口減少社会におけるICTの活用による教育の質の維持向上に係る実証事業」を活用し、第一小学校、第二小学校、中学校それぞれに電子黒板、タブレットPC等を整備した。テレビカメラ中継システムと電子黒板システム、タブレット端末連携システムを活用し、第一小学校と第二小学校の授業を同時に行う「遠隔授業」を開始した。貧すれば通ずというが、小学校統廃合への強い危機感から道は開けた。
   子供たちへの教育成果も大きい。授業では、相手校の児童の発言の様子が画面に写し出されるが、これを食い入るように見ることで集中して意見を聞く姿勢が身についてきた。自分の考えを的確に伝えられるよう、要点を整理しながら発言できる力もついた。日々の授業を通じ、ICT機器を適切に使えるようになり、プログラミングなどへの取り組みも進んでいる。

リニア開通までに弱みを強みに代える意気込みで

   今後、喬木村では、イチゴ栽培などで雇用を創出し、一方でICTを活用した魅力ある教育環境を提供するなど“合わせ技”で人の流れを生み出し、二地域居住や移住を進めようとしている。
   移住者向けの住居としては、戸建てを1か月6万円という破格値で用意し、かつ子供一人当たりに月に5千円の手当を支給している。新築の際にも、土地取得には60万円、家取得には50万円を支給するなど手厚い。村内での産業は限定的でも、地域へ人材を供給するベッドタウンとして都会からの移住者を受けられる環境整備が進む。
   小学校統廃合の危機からICT活用にたどり着き、今や村の強みとしているのが喬木村である。 
リニア開通に向けた各自治体の取り組みも、喬木村のように弱みを強みに代えるぐらいの意気込みで進めて欲しい。



  

 

 

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