地方創生第1期報告~自らの強みを磨き成果~<2019・07・12>

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最終更新日: 2019年7月12日

地方創生第1期 最終年度を迎えた2019年度 

   2015年度から始まった地方創生の第1期が、2019年度で最終年度を迎える。地方創生では、首都圏の人口一極集中や人口減少高齢化の動きを是正するために、地方への「ひと」「しごと」を還流し、地域を再生することを目標に、各自治体が人口増や産業活性化のための目標を立て、施策を実施してきた。
   現在は2019年の7月と最終年度中盤だが、県内の市町村のこの5年間の人口増加に関する成果を俯瞰しておきたい。

長野県内で人口を増やした市町村

  現在、評価できる直近の人口数は昨年の2018年だ。5年間という括りで考えると2013年との比較ということになる。統計上は2014年1月1日と2019年1月1日の「毎月人口異動調査」を比べた。そうした基準で人口増加を見ると、長野県の77市町村の中で人口が増えているのは、「御代田町」「原村」「南箕輪村」「白馬村」「茅野市」の5市町村だ。
   人口の増減は、生まれた数と死亡した数の差である自然増減と、転出・転入の差である社会増減を併せた数となる。5年という短い期間では自然増減を変えることは難しい。そこで社会増加を見ると、「北相木村」「軽井沢町」「野沢温泉村」が高い数値となっている。
   以前にも本コラムで県内の町村長を訪ねた報告をしてきたが、それらの取材結果を元にこれら自治体の人口増加の要因を考えてみたい。

新幹線による地の利の良さ

   まず、新幹線での地の利を生かしたのが「軽井沢町」「御代田町」だ。
   新幹線が開通して既に20年も経つので、今更という感じもするが、地の利を生かそうとすればいつでも成果がでるということだ。軽井沢町ブランドは褪せることなく、都会からの移住は多い。隣の御代田町でも県内で最も高かった介護保険料を下から2番目にするなど「暮らし易い街」を実現し、アピールすることで移住の増加に成功している。
 同じ東信にある「北相木村」でも新幹線での地の利を活かし、古くからの「山村留学」事業に磨きをかけた。関東で学習塾を展開する「はなまる学習塾」との連携で教育力を上げ、日本全国から留学生を集めている。

「観光」日本人気の追い風を活かす 

  2つ目はインバウンドなどで注目される日本観光の追い風を生かした「白馬村」「野沢温泉村」だ。
 両村ともにインバウンド観光客が多いのみならず、外国人の経営する宿泊施設も増えている。野沢温泉村では不足する飲食施設を村で新設するなど、交流人口の増加から梃入れをしてきた。
 また「茅野市」「原村」はペンションが多く立地するなど、暮らすための自然観光は卓越している。この自然環境の素晴らしさを生かし、若者定住策を講じて若い子育て世代の移住を実現している。「原村」では、40歳以下を対象にした新築住宅補助事業で、新たな居住者に50万円の補助を実施し、成果を出している。

産業が強い周辺自治体のベットタウンとしての立ち位置 

  3つ目が産業に強い自治体のベットタウンという位置づけで伸びている「南箕輪村」だ。
  南箕輪村では、隣接する伊那市のベットタウンとしてより暮らし易い街を目指し、いち早く「南箕輪村子ども・子育て支援事業計画」などで子育て施策を充実してきた。若い世帯の暮らし易さの探求には余念がなく、彼らを対象に「子育て支援に関するアンケート」を実施している。そして、それに応える施策を講ずるなど、真に若い世帯が暮らしやすい村を作り上げてきた。

自らの強みを磨き成果 

  このように従来からある町村の強みを見極め、それをさらに磨きあげることで成果に繋げている自治体がほとんどだ。
   地域活性化は、強みを活かすことから始まる。あるものを数え、ないものを嘆くことはしない。それは、地の利や観光地、ベットタウンなどである。
  また、北相木村のように、ないものを数え始めればきりがない中、「山村留学」というあるものを数えた。そして、「はなまる学習塾」という外部の力を加えることで、現代に蘇らせた。
  ほとんどのあるものは、昔ながらのものだ。これらをどのように今時点での「人を惹きつける魅力」に変えていかれるのかが問われている。
  第2期も足元の強みを見つめ直し、磨き上げで今に通用する「吸引力」としていくのかの戦略構築に期待したい。
 



  

 

 

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