他社のやらない道こそ歩め!<2019・07・01>
毎月、県内製造業の技術力や経営力を紹介するテレビ番組でコメンテーターを務めている。そこでは経営者から直接いろいろな話を伺うことができるのだが、大手企業と異なる独自の道を歩んでいる企業が多い。安曇野市の製茶メーカー「水宗園本舗」の取り組みは、一個人の生き方としても参考になった。
お茶はスーパーなどで安売り競争にさらされ、消費量も減っている。そうした厳しい環境下では大手がやらない分野を見極め、価格競争に巻き込まれない工夫が必要となる。
水宗園本舗は元々静岡県などから茶葉を仕入れて包装し、県内のスーパーなどに出荷してきた。しかし約20年前、関東などにも商圏を拡大しないと会社に未来はないと考え、主力商品として有機栽培茶に目をつけた。
当時、有機栽培茶は化学肥料を与えないことから雑味が多く、大手は手を出さない分野だった。しかし、同社は安心安全な有機栽培茶は健康志向の高まりに伴って売れると確信。鹿児島県知覧町で有機栽培に取り組む生産者と巡り合い、毎年一定量を固定価格で買い取ることにした。
また、自家製の有機肥料を開発して茶葉の品質向上にも成功。生産者との協業で生み出した茶葉はどこにも真似できないものとなり、近年のオーガニックブームと相まって販路を拡大しているという。
我々はどうしても、メジャーなものに飛びついてしまいがちだが、そうした分野は得てして多くの競争相手がいるものだ。有機栽培茶のように、本来の魅力はあるのに磨ききれていない分野を探して取り組むことが、企業でも個人でも成功への近道であるように思う。
(初出)『独自路線 成功の近道』「しなの草子」読売新聞長野版2019年6月29日朝刊
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